【美術館】青森県「弘前れんが倉庫美術館」

青森県弘前市に建つ「弘前れんが倉庫美術館」は、明治から大正にかけて酒造工場として建てられた吉井酒造煉瓦倉庫を、現代美術館として再生したプロジェクトです。パリを拠点とする建築家・田根剛が「記憶の継承」をコンセプトに掲げ、既存の煉瓦壁や木造小屋組を可能な限り残す「延築(えんちく)」という手法で改修し、2020年に開館しました。非住宅建築の木造化・木質化が求められるいま、本事例は新築ではなく既存ストックの木部を活かす再生のモデルを示します。天井を覆う木造小屋組の保存と再生、古材と新材を調和させる工夫、シードル・ゴールドに輝くチタン屋根など、木と煉瓦が織りなす空間づくりの要点を、建材・木材メーカー、工務店・建設会社、設計事務所の視点から読み解きます。旧倉庫の記憶を継ぎながら、木を主役に据えた非住宅リノベーションのヒントが詰まった一件です。

弘前れんが倉庫美術館のコンセプト|記憶の継承

弘前れんが倉庫美術館のコンセプト|記憶の継承
  • 明治〜大正築の煉瓦倉庫を美術館へと用途転換した大規模改修プロジェクト
  • 建築家・田根剛が「記憶の継承」を掲げ、壊さず活かす「延築」を実践
  • 既存の木造小屋組・煉瓦を保存し、時間の蓄積そのものを空間の価値に転換

弘前れんが倉庫美術館と延築という考え方

  • 「延築」は建物の寿命を延ばして使い続ける田根剛独自の設計概念
  • 古い建物を壊さず、素材と記憶を次世代へ引き継ぐ思想が根底にある
  • 新築偏重ではなく、木造・煉瓦ストックの長寿命化を体現する

弘前れんが倉庫美術館の木造小屋組を残す設計

  • ライブラリー天井には既存の木造小屋組を一面に「あらわし」で保存
  • 部分的な梁の入れ替えなど最小限の介入で木架構を再生
  • 木の構造体をそのまま見せ、産業遺産の記憶を空間として体感させる

弘前れんが倉庫美術館の煉瓦倉庫リノベーション

  • 市民ギャラリー・展示室・カフェの3棟へ機能を再編して活用
  • 60以上の法令・基準をクリアし、倉庫から美術館への用途変更を実現
  • 煉瓦造+一部鉄骨・RC・木造の複合構造をそのまま継承した

弘前れんが倉庫美術館のポイント|木質化と保存

弘前れんが倉庫美術館のポイント|木質化と保存
  • 既存木部の保存と、古材・新材を調和させる木質化の工夫が光る
  • 外観を変えない耐震補強で、歴史的価値と現行の安全性を両立
  • チタン「シードル・ゴールド」の屋根が新旧を象徴的につなぐ

弘前れんが倉庫美術館の古材再利用と木質化

  • 劣化の程度に応じ、既存木材を残置・再利用・入れ替えで使い分け
  • 古材と新材の色や質感を丁寧になじませる納まりを追求
  • 木の経年変化を隠さず、味わいとして活かす木質化の発想

弘前れんが倉庫美術館の耐震補強と既存活用

  • 高さ約9mのPC鋼棒を挿入し、外観を保ったまま耐震補強を実現
  • 煉瓦や木部の意匠を損なわずに現行の耐震基準へ適合させた
  • 既存部材は状態を見極め、残置か再利用かを一つずつ選択

弘前れんが倉庫美術館のシードルゴールドの屋根

  • 老朽化した屋根を特注チタン約13,000枚で菱葺きに葺き直し
  • 弘前ゆかりのシードルにちなむ黄金色が、季節や光で表情を変える
  • 新設の金属屋根が、保存した木・煉瓦の下地を長く守り続ける

弘前れんが倉庫美術館のギャラリー

弘前れんが倉庫美術館 外観
弘前れんが倉庫美術館 外観
弘前れんが倉庫美術館 内観
弘前れんが倉庫美術館 内観
弘前れんが倉庫美術館 内観
弘前れんが倉庫美術館 内観
弘前れんが倉庫美術館 内観
弘前れんが倉庫美術館 内観
弘前れんが倉庫美術館 内観
  • URLをコピーしました!

著者

一級建築士。群馬県出身。芝浦工業大学卒業後、設計事務所・工務店・木構造材メーカー勤務を経て、2015年にハウス・ベース株式会社を起業。事業内容:住宅・建築関連の業務支援。特に非住宅用途の木造化・木質化支援(広報支援・設計支援・実務支援)に注力。木造非住宅オウンドメディア「モクプロ」を運営。