
スイデンテラス(SHONAI HOTEL SUIDEN TERRASSE)は、プリツカー賞建築家・坂茂(ばん・しげる)氏が設計した「田んぼに浮かぶ木造ホテル」です。
積雪1.5mという厳しい荷重条件の多雪地で、RC・木造・鉄骨を状況に応じて使い分ける混構造を採用し、スパン16mの木質折板屋根による大空間を実現しました。
非住宅・大規模建築での木造化/木質化を検討する建材・木材メーカー、工務店、設計事務所にとって、技術的にも事業的にも示唆に富む先行事例です。
山形県鶴岡市の鶴岡サイエンスパーク内に2018年に開業した、滞在型ホテルです。
庄内平野の象徴である水田のランドスケープから着想し、「晴耕雨読の時を過ごす、田んぼに浮かぶホテル」をコンセプトに掲げています。
事業主は地域発のベンチャー、ヤマガタデザイン株式会社。
構造設計は世界的な構造事務所Arupが担当。
共用棟・3つの宿泊棟・大浴場棟をブリッジでつなぐ分棟形式で、延床面積は約9,087㎡、地下1階・地上2階建て。
基壇となる1階RC造の上に木造のボリュームが載り、周囲の水盤(地下水)に映り込むことで、まさに水田に浮かぶような佇まいを見せます。
客室は基礎と一部を除き木造で、坂茂のアイコンである紙管が家具やスクリーンに用いられ、木のぬくもりに満ちた空間が広がります。
源泉かけ流しの天然温泉、フィンランド式サウナ、2,000冊超のライブラリーを備え、地方創生のシンボルとして国内外から注目を集める非住宅木造の代表事例です。
スイデンテラス:プロジェクト概要

| 項目 | 内容 |
| 正式名称 | SHONAI HOTEL SUIDEN TERRASSE(ショウナイホテル スイデンテラス) |
| 用途 | ホテル(宿泊施設) |
| 所在地 | 山形県鶴岡市北京田字下鳥ノ巣23-1(鶴岡サイエンスパーク内) |
| 開業 | 2018年9月19日 グランドオープン |
| 設計 | 坂 茂建築設計(建築家・坂 茂) |
| 構造設計 | Arup |
| 事業主・運営 | ヤマガタデザイン株式会社 |
| 構造 | 鉄筋コンクリート造+木造+一部鉄骨造(混構造) |
| 規模 | 地下1階・地上2階 |
| 延床面積 | 約9,087㎡(共用棟・客室棟・大浴場棟) |
| 構成 | 共用棟/宿泊棟3棟(出羽三山=羽黒山・月山・湯殿山に由来)/大浴場棟/ブリッジ3本 |
| 設計上の特記 | 積雪荷重1.5mの多雪地域、スパン16mの木質折板屋根 |
スイデンテラスのコンセプト:田園と木造建築

水田に溶け込む低層・木質の風景づくりが、このプロジェクトの設計思想の核です。要点は以下のとおりです。
- 庄内平野の水田というランドスケープを保全し、風景に馴染む低層の木質構造を志向
- 「晴耕雨読の時を過ごす、田んぼに浮かぶホテル」をコンセプトに掲げる
- 建築を「地域や社会のもの」と捉える坂 茂の思想と、地域企業の理念が合致して実現
スイデンテラスの設計コンセプト

- 「水田に浮かぶ」感覚を、構造とランドスケープの両面でデザインした建築です。
- 基壇となる1階RCをピロティ状に扱い、水盤(地下水)に映すことで浮遊感を演出
- どこに身を置いても田んぼの気配を感じられるよう、全面ガラスと低層水平のプロポーションを採用
- 「空間・本・食・農・地域・癒」の6つのキーワードで滞在体験を構築
スイデンテラスと地方創生・まちづくり

- 単体のホテルではなく、地域再生モデル「鶴岡サイエンスパーク」を構成する一体開発の一部です。
- 慶應義塾大学先端生命科学研究所やバイオベンチャーが集積するエリアに立地
- 事業主はまちづくりを掲げる地域ベンチャー、ヤマガタデザイン株式会社
- 児童遊戯施設「キッズドーム ソライ」など複数施設と一体で計画された開発
スイデンテラスを手掛けた建築家・坂 茂

- 設計は2014年プリツカー賞を受賞した建築家・坂茂氏です。
- 紙管(ペーパーチューブ)を構造・家具に用いる手法で世界的に知られる
- 災害復興や公共建築など「社会に開かれた建築」を一貫して追求
- 館内では椅子・ベンチ・スクリーンなどに紙管を採用し、サインとなる意匠を展開
スイデンテラスのポイント:混構造と木質化技術

非住宅・大規模かつ多雪地という難条件を、構造の使い分けで解いた点が最大の技術的見どころです。要点は以下のとおりです。
- 積雪荷重1.5mに対し、RC・木造・鉄骨を状況に応じて組み合わせた混構造で対応
- 共用棟はスパン16mの木質折板屋根による無柱に近い大空間を実現
- 宿泊棟はシンプルな集成材軸組で構成し、木の架構をそのまま空間化
スイデンテラスの構造(RC・木造・鉄骨の混構造)

- 4種類の異なる構造をRC・鉄骨との混構造とし、条件ごとに最適化しています。
- 基壇の1階RCが構造コアとして水平力・鉛直荷重を負担
- 木造主体のボリュームを多雪地でも成立させるためのハイブリッド設計
- 構造設計はArupが担当し、合理的な力の流れを意匠と両立
スイデンテラスの共用棟|カラマツ集成材の折板屋根

- スパン16mの切妻大空間を、木質折板架構で構成しています。
- 厚み90mmのカラマツ集成材をフルスレッドビスの斜め打ちで接合し折板を形成
- 2階外周の鉄骨フレーム+1階RC架構と組み合わせて全体を成立
- 鉄骨フレームにはLVLブレース(端部ラグスクリューボルト接合)を組み込み地震力を負担
スイデンテラスの宿泊棟|集成材軸組と積雪対応

- グリッド状の集成材軸組に屋根パネルを載せたシンプルな木造架構です。
- 集成材の軸組+構造用断熱パネルの屋根で構成
- 外周が片持ちとなるRC基礎の上に木造架構を建てる
- 共用棟とはH形鋼によるフィーレンディール(ヴィーレンディール)トラスのブリッジで接続
スイデンテラスのよくある質問(FAQ)

Q. スイデンテラスは木造ですか?
A. はい。基礎・基壇となる1階はRC造、一部に鉄骨を用いた混構造ですが、客室棟をはじめとする上部構造は木造主体です。共用棟の大屋根はカラマツ集成材による木質折板でつくられています。
Q. 設計者は誰ですか?
A. プリツカー賞建築家・坂茂氏(坂 茂建築設計)です。構造設計はArupが担当しました。
Q. どこにありますか?
A. 山形県鶴岡市の鶴岡サイエンスパーク内です。庄内空港から車で約20分、JR鶴岡駅から車で約5分の田園地帯に立地します。
Q. なぜ「水田に浮かぶ」と呼ばれるのですか?
A. 1階RCをピロティ状に扱い、建物周囲の水盤(地下水)に低層の木造ボリュームが映り込むため、水田に浮いているように見えるからです。
Q. 積雪の多い地域でなぜ木造が成立したのでしょうか?
A. 積雪荷重1.5mという厳しい条件に対し、RC・鉄骨・木造を状況に応じて使い分ける混構造とし、力の流れを構造ごとに最適化したためです。
編集後記|非住宅木造化・木質化のヒントとして

スイデンテラスは、「多雪地」「大スパン」「非住宅・大規模」という、木造化のハードルが高い条件を、混構造と集成材・LVLの適材適所で乗り越えた好例です。用途や荷重条件に応じて木・RC・鉄骨を組み合わせる発想は、ホテル・宿泊施設に限らず、これから非住宅木造化/木質化を検討する建材・木材メーカー、工務店・建設会社、設計事務所にとって実務的な手がかりになります。
※本記事は公開情報(公式サイト、構造設計者・施工関連企業の公開資料、建築専門メディア等)をもとに編集部が再構成したものです。数値・仕様は計画時点の公表値を含み、現況と異なる場合があります。
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