
熊本・南阿蘇鉄道高森駅|南郷檜と修羅組みが織りなす木造駅舎

2016年の熊本地震からの創造的復興のシンボルとして整備された「南阿蘇鉄道高森駅・交流施設」。
熊本県阿蘇郡高森町に位置し、くまもとアートポリス事業の一環として計画されました。
設計は公募型プロポーザルで選定されたヌーブ(太田浩史氏)が担当。
駅舎と交流施設、それらをつなぐ回廊と広場で構成され、地域産材である「南郷檜(なんごうひ)」を構造・仕上げに活用した木造建築です。
「とにかく広いプラットフォーム」をコンセプトに、阿蘇の雄大なカルデラや夕日を望む西向きの配置計画が特徴で、駅としての機能だけでなく、地域住民や観光客が集う交流拠点としての役割も担っています。
特殊な木構造「修羅組み」の採用など、木造非住宅建築における意匠と技術の融合を示す注目の事例です。
南阿蘇鉄道高森駅 コンセプト

- 「とにかく広いプラットフォーム」: 全長160mに及ぶプラットフォームを核とし、駅前ロータリーを設けず、塔と回廊で囲まれた芝生広場と一体化した空間を創出しています。
- 風景を取り込む配置: 通常の駅舎とは異なり、建物が線路側(阿蘇カルデラ側)を向く配置計画により、利用者が常に雄大な風景と向き合えるよう設計されています。
- 町と駅の融合: 改札口を設けず、町からプラットフォームまで地続きでアクセスできる開放的な動線計画とし、日常的に人々が立ち寄れる場所としています。
南阿蘇鉄道高森駅 デザイン

- 風景との調和: 西に沈む夕日や阿蘇五岳の風景を最大限に取り込むため、建物と広場が一体となるランドスケープデザインが採用され、駅そのものが風景の一部となっています。
- 象徴的な塔: 旧駅舎の記憶を継承する「南郷檜の塔」が広場に設置され、夜間は行灯のように発光し、地域の新たなランドマークとして機能しています。
- 開放的な空間構成: 屋内と屋外を緩やかにつなぐ回廊や大きな開口部により、待合スペースや交流施設からでも自然環境を身近に感じられる空間を実現しています。
南阿蘇鉄道高森駅 計画

- グランドデザイン: 単なる駅舎の建て替えにとどまらず、周辺の交通計画や広場整備を含めた一体的なグランドデザインとして計画され、駅周辺全体の再生を図っています。
- 防災拠点としての機能: 熊本地震の教訓を活かし、交流施設は災害時の車中泊支援拠点としても機能するよう、駐車場や設備インフラが整備されています。
- 地域活性化の核: 地元の高校に新設された「マンガ学科」など地域の新たな文化資源と連携した展示スペースを設け、観光と定住の両面からまちづくりに寄与しています。
南阿蘇鉄道高森駅 ポイント

- 特殊木構造「修羅組み」: 回廊部分には、南郷檜を用いた三次元相持ち構造(レシプロカル構造)である「修羅組み」を採用し、ダイナミックな木組みを見せています。
- 地域産材の活用: 高森町特産の「南郷檜」を構造材や仕上げ材としてふんだんに使用し、地産地消を推進するとともに、木のぬくもりを感じられる空間を創出しています。
- 非住宅木造の可能性: 複雑な架構や大規模な半屋外空間を木造で実現し、公共施設における木材活用の新たな技術的・意匠的な可能性を提示しています。
南阿蘇鉄道高森駅 構造

- レシプロカル構造: 細い部材を互いに支え合わせることで大スパンや複雑な形状を実現する「修羅組み」により、見る角度によって表情を変える軽やかな回廊空間を作り出しています。
- 技術的な挑戦: プレカット技術と職人の手仕事を高度に組み合わせることで、複雑な仕口を持つ木造架構を精度高く実現し、施工精度の高さを示しています。
- 意匠と構造の融合: 構造体そのものを意匠として見せる現し仕上げとすることで、木の力強さと幾何学的な美しさを同時に表現し、訪れる人々に強い印象を与えます。
南阿蘇鉄道高森駅 木材

- 南郷檜のブランド化: 構造材から仕上げ材に至るまで地域材である「南郷檜」を全面的に採用し、地域の林業振興と木材ブランドの発信に大きく貢献しています。
- 経年変化: 無垢の木材を使用することで、時と共に色合いが深まる経年変化を楽しめる建築となっており、地域と共に歴史を刻む素材選定がなされています。
- 環境への配慮: 地域材の利用による輸送コスト削減や炭素固定への貢献など、環境負荷低減を意識したサステナブルな建築計画として評価されています。
南阿蘇鉄道高森駅:ギャラリー












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