【駅舎】宮崎県「日向市駅」

【駅舎】宮崎県「日向市駅」

【宮崎県】日向市駅|地元杉材と鉄骨のハイブリッド木造駅舎

【宮崎県】日向市駅|地元杉材と鉄骨のハイブリッド木造駅舎

宮崎県日向市に位置するJR九州の「日向市駅」は、地元の特産である「耳川杉」をダイナミックに使用した高架駅舎です。

意匠統括に建築家の内藤廣氏、構造設計に川口衞構造設計事務所を迎え、2006年に駅舎が、2008年に駅前広場を含めた全体が完成しました。

本プロジェクトの最大の特徴は、駅舎と駅前広場を一体的に覆う巨大な木造キャノピーと、鉄骨造(S造)と木造(集成材)を組み合わせたハイブリッド構造にあります。

「林業のまち」としてのアイデンティティを表現しつつ、公共交通機関としての安全性と耐久性を確保するため、適材適所の素材選定が行われました。

その高いデザイン性と地域への貢献が評価され、鉄道関連の国際デザインコンペ「ブルネル賞」で最優秀賞を受賞するなど、国内外で高く評価されています。

日向市駅のコンセプト:地域の杉材が繋ぐ駅と街

日向市駅のコンセプト:地域の杉材が繋ぐ駅と街
  • 「森のような建築」をテーマに、地元・耳川流域産の杉材を構造材および仕上げ材として全面的に採用。
  • 高架化によって分断されがちな駅の東西エリアを、木質の温かみあるコンコースと連続する広場のデザインで一体化。
  • 「長く使い続ける」ことを前提に、市民参加によるメンテナンスイベントの実施や、木材の経年変化を美として捉える思想を計画に反映。

日向市駅×内藤廣氏の意匠

日向市駅×内藤廣氏の意匠
  • 内藤廣氏の設計哲学の一つである「木の弱さを鉄で補い、鉄の冷たさを木で和らげる」構成を具現化しています。
  • 杉の集成材によるリズミカルなアーチ架構が、無機質になりがちな高架ホームやコンコースに有機的な温もりと秩序を与えています。
  • ガラス張りのホームや、駅舎から広場へと伸びるキャノピーにより、外部の街並みと駅空間が連続し、夜間には駅の明かりが行灯のように街を照らします。

日向市駅×耳川杉(地域材)

日向市駅×耳川杉(地域材)
  • 宮崎県北部の林業地帯「耳川流域」で産出される良質な杉材を、構造用集成材として使用しています。
  • 地元の製材所や加工場を活用することで、ウッドマイルズ(木材輸送距離)を削減し、環境負荷の低減と地域経済への貢献を実現しました。
  • 地域の素材を公共建築のメインストラクチャーに据えることで、市民のシビックプライド(都市に対する誇り)の醸成と林業振興に寄与しています。

日向市駅の建築ポイント:鉄と木のハイブリッド構造

日向市駅の建築ポイント:鉄と木のハイブリッド構造
  • 構造的な合理性を追求し、高い剛性と強度が求められる柱や基部には鉄骨、軽量化と意匠性が求められる屋根架構には木材を使用。
  • 日本初となる杉の「変断面湾曲集成材」を採用し、応力分布に応じた合理的かつ滑らかなフォルムを実現。
  • 木材の最大の課題である腐朽リスクを考慮し、雨掛かりの少ない部分に木を使用しつつ、万が一の場合に交換可能なディテールを採用。

日向市駅×ハイブリッド構造

日向市駅×ハイブリッド構造
  • 鉄骨のラーメンフレームの上に、杉集成材のトラスやアーチを載せる混構造形式を採用しています。
  • 屋根部分を軽量な木造にすることで、下部構造への負担を減らしつつ、台風の多い地域特性を考慮した耐風性と耐震性を確保しました。
  • 鉄と木という異素材の接合部(ノード)を隠さずに美しくデザインし、構造そのものを意匠として見せる「現し(あらわし)」仕上げとしています。

日向市駅×変断面集成材

日向市駅×変断面集成材
  • 構造計算に基づき、部材にかかる力(モーメント)に合わせて断面サイズを連続的に変化させる、高度な加工技術を導入しました。
  • 杉材特有の強度のバラつきをカバーするため、厳密なグレーディング(格付け)と品質管理を行ったラミナ(ひき板)を使用しています。
  • プレカット技術を駆使した精度の高い部材加工により、複雑な曲面を持つ屋根架構の現場施工をスムーズかつ短工期で実現しました。

日向市駅:ギャラリー

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ハウス・ベース株式会社の木造化・木質化支援

非住宅用途の建築物で、木造化・木質化の更なる普及が期待されています。

諸問題を解決して、木造化・木質化を実現するには、「木が得意な実務者メンバー」による仕事が必要不可欠です。

木造非住宅ソリューションズでは、発注者の課題に対して、最適な支援をご提案します。

ハウス・ベース株式会社は、建築分野の木造化・木質化を支援するサービスである「木造非住宅ソリューションズ」を展開しています。

「木造非住宅ソリューションズ」とは、脱炭素社会実現に向けて、建築物の木造化・木質化に関する課題解決に貢献するための業務支援チームです。

◾️テーマ:「(木造化+木質化)✖️α」→木造化・木質化を追求し、更なる付加価値を創出

◾️活動の主旨:木に不慣れな人・会社を、木が得意な人・会社が支援する仕組みの構築

【主なサービス内容】

◾️広報支援:コンテンツマーケティング、WEBサイト制作、コンテンツ制作等

◾️設計支援 :設計者紹介、計画・設計サポート、設計・申請補助等

◾️実務支援 :木構造支援、施工者紹介、講師等

木造化・木質化で専門家の知見が必要な場合は、ぜひハウス・ベース株式会社までお気軽にお問合せください。

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著者

一級建築士。群馬県出身。芝浦工業大学卒業後、設計事務所・工務店・木構造材メーカー勤務を経て、2015年にハウス・ベース株式会社を起業。事業内容:住宅・建築関連の業務支援。特に非住宅用途の木造化・木質化支援(広報支援・設計支援・実務支援)に注力。木造非住宅オウンドメディア「モクプロ」を運営。