
近年、商業施設やオフィス、倉庫といった「非住宅」分野で、木造建築への注目が急速に高まっています。
「都市(まち)の木造化推進法」を追い風に、脱炭素社会の実現やサステナビリティへの貢献といった観点から、国を挙げた一大トレンドとなっているのです 。
しかし、多くの建材メーカー様、工務店・建設会社様、設計事務所様といった建築実務者の皆様にとって、非住宅の木造化に踏み出す上で大きな壁となるのが「コスト」ではないでしょうか。
「木造は鉄骨(S造)や鉄筋コンクリート(RC造)より高いのでは?」
「特殊な技術が必要で、結局コストがかさむのでは?」
といった不安の声をよく耳にします。
確かに、構造躯体の材料費だけを比べると、特注材を多用した場合は、木造の方が高くなるケースはあります。
しかし、それはコストの一側面に過ぎません。
実は、木造非住宅のコストは「設計」の段階で大きくコントロールすることが可能であり、建物の総工費で比較すると、S造やRC造と同等、あるいはそれ以上にコスト競争力を持つケースも少なくないのです。
この記事では、非住宅木造化のプロジェクトを成功に導くため、「コスト」をテーマに、設計における具体的な注意点をプロの視点で徹底的に解説します。
S造・RC造とのコスト構造の違いから、コストを抑える構造計画、避けては通れない防火規制のクリア方法、そして活用必須の補助金制度まで。皆様が抱えるコストへの不安を解消し、新たな挑戦への一歩を後押しする「ナレッジ」をお届けします。

木造非住宅は本当に高い?S造・RC造とのコスト構造を徹底比較

「木造は高い」という漠然としたイメージは、多くの方が抱く先入観かもしれません。
しかし、そのイメージは本当に正しいのでしょうか。
もちろん、CLTのような先進的な木質材料を使ったり、特殊な加工が必要な大スパン空間を作ったりすれば、構造躯体の費用はS造やRC造を上回ることもあります 。
しかし、建築コストは躯体だけで決まるものではありません。
重要なのは、基礎工事や運搬費、内装工事費、さらには工期まで含めた「総工費」で比較検討することです。
木造ならではの特性を理解し、プロジェクト全体でコストを最適化する視点を持つことで、「木造は高い」というイメージは覆ります。
ここでは、坪単価だけでは見えないコストの全体像を明らかにするため、S造・RC造と木造のコスト構造の違いを、具体的なデータと共に詳しく見ていきましょう。
坪単価だけでは見えない!総工費で考えるコストの真実
木造非住宅のコストを考える際、坪単価や躯体工事費だけで判断するのは早計です。
複数の事例研究によれば、特定の条件下で木造はS造やRC造と十分に競争力があることが示されています。
木造のコストパフォーマンスは、プロジェクト全体の費用構成を理解することで初めて正しく評価できます。
構造躯体のコストは、CLTなど高価な材料を使えばS造やRC造の2倍近くになることもありますが 、後述する基礎工事や仕上げ工事など、他の項目で大幅なコストダウンが可能なため、総工費では十分に太刀打ちできるのです。
プロジェクトの初期段階で、一部分のコストに囚われず、全体のバランスを見極めることが成功の鍵となります。
コスト削減の最大の鍵は「基礎工事」と「運搬費」にあり
木造非住宅が持つ最大のコスト優位性は、その「軽さ」にあります。
建物全体の重量がS造やRC造に比べて大幅に軽いため、建物を支える基礎構造を簡素化できるのです 。
これは、S造では大規模な独立フーチング基礎が必要になるのに対し、木造ではよりシンプルな布基礎で対応できる場合が多いためです。
掘削する土の量や、使用するコンクリート、鉄筋の量を大幅に削減できます。
特に地盤が軟弱な土地では、S造やRC造では必須となる地盤改良工事が、木造では不要または小規模で済むケースがあり、これが数百万単位の決定的なコスト差を生むことも少なくありません 。
さらに、部材の軽さは「運搬費」にも好影響を与えます。
鉄骨部材に比べて軽量で小型な木造部材は、輸送効率が高いです 。
この「基礎」と「運搬」におけるコストメリットを最大限に引き出すことが、プロジェクト全体の費用を抑える上で極めて重要です。
初期費用だけじゃない!法定耐用年数とライフサイクルコスト
建物のコストを評価する上で、建設時の初期費用(イニシャルコスト)だけでなく、長期的な視点を持つことが不可欠です。
その一つが、税法上の「法定耐用年数」です。
木造が22年であるのに対し、鉄骨造(骨格材の厚さによる)は19年~34年、RC造は47年と定められています 。
この違いは、毎年の減価償却費の計算に影響し、事業のキャッシュフロー計画や税務戦略に関わってきます。
事業者にとっては、投資回収の計画を立てる上で重要な指標となるでしょう。
また、法定耐用年数はあくまで税法上の指標であり、実際の建物の寿命とは異なります。
適切なメンテナンスを行えば、木造建築も数十年以上にわたって使用することが可能です。
むしろ、木造は将来的な間取りの変更やリフォームが比較的容易であるというメリットもあります。
鉄骨造やRC造に比べて改修コストを抑えやすく、時代のニーズに合わせて建物の価値を維持・向上させやすい点は、ライフサイクルコストの観点から大きな強みと言えるでしょう。
コストを抑える設計の極意!構造計画と材料選びのポイント

木造非住宅のコストパフォーマンスは、設計の初期段階、特に「構造計画」と「材料選び」でその大枠が決まると言っても過言ではありません。
S造やRC造の設計思想のまま木造に置き換えるだけでは、木が持つ本来のコストメリットを引き出すことはできません。
大切なのは、木という材料の特性を深く理解し、その特性を最大限に活かす設計を行うことです。
例えば、一般的に流通している木材の寸法を基準にプランを考えたり、求められる空間の広さや機能に応じて最適な構造形式を選択したりすること。
こうした設計初期の戦略的な判断が、最終的な総工費に大きく影響します。
ここでは、コスト効率の高い木造建築を実現するための、設計の極意を具体的に解説していきます。
「一般流通材」を使いこなす!コストを意識したスパン計画
コスト管理の基本戦略は、構造設計を可能な限り「一般流通材」を前提に組み立てることです 。
特殊な寸法や強度が求められる特注材は、コストが跳ね上がるだけでなく、納期がかかり工期全体に影響を及ぼす可能性があります。
例えば、柱の長さを標準的な3mや4mを基準に階高を設定するだけでも、材料のロスを減らし、加工費を抑えることができます 。
特にコストに大きく影響するのが、柱と柱の間隔である「スパン」です。
一般的に、スパンが6mまでであれば、住宅用にも使われる一般的な製材とプレカット機械で経済的に対応できます 。
しかし、スパンが6mを超えて9m程度になると、製材では大きな断面が必要になり、集成材などのエンジニアードウッドの方が有利になる場合が多くなります 。
さらに9mを超える大スパンになると、大断面集成材やCLT、あるいはトラス架構といった特殊な構造形式が必要となり、専門的な設計とコスト評価が求められます 。
プロジェクトで求められる空間の大きさに応じて、どのスパン計画が最もコスト効率が良いかを初期段階で見極めることが重要です。
CLTは高い?適材適所の材料選びでコストを最適化する
CLT(Cross Laminated Timber)は、高い強度と設計自由度から注目される先進的な木質材料ですが、「コストが高い」というイメージが先行しがちです。
確かに、材料単価だけを見ると高価な場合がありますが、使い方次第でトータルコストを最適化することが可能です 。
例えば、CLTパネルを床や壁に使い、そのまま内装の仕上げ材として「現し」で利用する設計にすれば、天井や壁の下地工事や仕上げ工事を大幅に削減でき、内装工事費と工期を圧縮できます 。
また、CLTを使用した建築は、国や自治体の補助金制度の対象となりやすいという大きなメリットもあります 。
補助金を活用することで、材料費の増加分を十分にカバーできるケースも少なくありません。
全ての構造材をCLTにするのではなく、コストを抑えやすい在来軸組工法を基本としながら、大スパンが必要な箇所やデザイン的に見せたい部分にだけCLTを効果的に使うなど、「適材適所」の材料選びが、コストと性能を両立させる鍵となります。
開放的な空間とコストの両立。「ラーメン構造」という選択肢
店舗やオフィス、福祉施設といった非住宅建築では、柱や壁の少ない広々とした開放的な空間が求められることが多くあります。
こうしたニーズに応える強力な選択肢が、柱と梁を強固に接合して骨組みを構成する「ラーメン構造」です 。
ラーメン構造の最大のメリットは、筋交いや耐力壁に頼らずに建物の強度を確保できるため、設計の自由度が格段に高いことです 。
これにより、大きな窓や出入り口を自由に設けたり、将来的な間取りの変更にも柔軟に対応できる「スケルトン・インフィル」の考え方を実現しやすくなります 。
一方で、部材の断面が大きくなりがちで、接合部も複雑になるため、壁で支えるツーバイフォー工法などに比べてコストが高くなる傾向があるというデメリットも存在します 。
しかし、必要な箇所にだけラーメンフレームを採用し、他の部分はコストを抑えやすい耐力壁と組み合わせるハイブリッドな設計を行うことで、コストをコントロールしながら開放的な空間を実現することが可能です 。
避けては通れない「防火規制」を賢くクリアする方法

木造非住宅の設計において、特に都市部でプロジェクトを進める上で避けては通れないのが、建築基準法に定められた「防火規制」です。
建物の規模や用途、建設される地域によっては、火災時に建物の倒壊や延焼を防ぐための高い防火性能を持つ「耐火建築物」とすることが法律で義務付けられています 。
かつては「木造で耐火建築物は難しい」というイメージがありましたが、技術開発と法整備が進んだ現在では、木造でも耐火性能を確保する様々な手法が確立されています。
規制を正しく理解し、プロジェクトの条件に合った最適な方法を選択することが、スムーズな許認可取得とコスト管理の両立に繋がります。
ここでは、複雑な防火規制を賢くクリアするためのポイントを解説します。
まずは基本から!耐火建築物が求められる条件とは?
非住宅建築のプロジェクトを始めるにあたり、まず確認すべきは、計画中の建物が法的に「耐火建築物」にする必要があるかどうかです。
建築基準法では、主に以下の3つの観点から、建物の規模、用途、そして立地(地域)に応じて耐火性能を求めています 。
- 規模による規制: 高さ16m超、または地階を除く階数が4階建て以上の建築物、延べ面積が3,000㎡を超える建築物などが対象です 。
- 用途による規制: 学校、病院、ホテル、物販店など、不特定多数の人が利用する「特殊建築物」で、一定の規模を超えるものは耐火建築物とする必要があります 。
- 地域による規制: 都市計画で定められた「防火地域」や「準防火地域」内では、建物の階数や延べ面積に応じて耐火建築物または準耐火建築物とすることが求められます 。
これらの条件は複雑に絡み合うため、プロジェクトの初期段階で所轄の行政庁に確認し、求められる防火性能のレベルを正確に把握しておくことが非常に重要です。
木造で耐火性能を実現する2つのアプローチ:「告示仕様」と「大臣認定」
木造で「耐火建築物」を実現するための技術的なアプローチは、大きく分けて2つあります 。
一つ目は、国が定めた仕様(レシピ)通りに設計・施工する「告示仕様」です。
これは、柱や梁といった木造の構造躯体を、燃えにくい性質を持つ「強化せこうボード」で隙間なく覆うことで、火災の熱から木材を守る「被覆型」が基本となります 。
仕様が決まっているため設計しやすい反面、木材を内装に現すことが難しいという制約があります。
二つ目は、個別の性能試験に基づき、国土交通大臣の認定を取得した独自の工法や部材を使用する「大臣認定」です 。
日本木造住宅産業協会(木住協)などが取得した認定工法が代表的で、これらを用いることで、木材をデザインとして見せながら耐火性能を確保するなど、告示仕様よりも設計の自由度が高い建築が可能になります 。
ただし、認定された特定の仕様を厳密に守る必要があります。
プロジェクトのデザイン性やコスト、工期などを総合的に考慮し、どちらのアプローチが最適かを選択することが求められます。
設計の自由度が広がる!近年の法改正と規制緩和の動向
木造建築を取り巻く法規制は、固定的なものではなく、技術の進歩に合わせて常に進化しています。
特に2019年に施行された改正建築基準法は、木造建築の可能性を大きく広げるものでした 。
この改正の大きなポイントは、大規模な木造建築物に対する防火規制が合理化された点です。
従来は、一定規模以上の木造建築物は一律に「耐火構造」とすることが求められていましたが、改正後は、火災が発生しても建物が倒壊するまでの時間を考慮した「火災時倒壊防止構造」という新たな性能基準を満たすことで、耐火構造以外の選択肢も可能になりました 。
これにより、例えば4階建ての建築物でも、一定の条件下で柱や梁などの木材を「現し」で見せるデザインが実現しやすくなったのです 。
こうした規制緩和の動向を常に把握し、最新の技術情報を取り入れることで、より自由で創造的な木造建築の設計が可能になります。
法規制を単なる制約と捉えるのではなく、新たな設計の可能性を引き出すためのツールとして活用する視点が重要です。
長く愛される建物のために。耐久性と快適性の設計ポイント

コストや法規制をクリアすることはプロジェクト成功の必須条件ですが、それだけで利用者に長く愛される建物が生まれるわけではありません。
建物の資産価値を長期にわたって維持するための「耐久性」と、そこで過ごす人々の満足度を高める「快適性」。
この2つの要素もまた、設計段階での緻密な配慮が不可欠です。
特に木造建築は、自然素材である木を扱うからこそ、湿気やシロアリ、音の問題に対して適切な対策を講じる必要があります。
しかし、これらの課題は決して木造の弱点ではありません。
むしろ、木の特性を理解し、設計の工夫で乗り越えるべき工学的なテーマです。
ここでは、建物の価値を時間と共に高めていくための、耐久性と快適性の設計ポイントを解説します。
木造の寿命は設計で決まる!防水・防腐・防蟻対策の基本
木造建築を長持ちさせるための最も重要な原則は、構造材である木材を「常に乾燥した状態に保つこと」です。
木材の劣化を引き起こす腐朽菌は、水分がなければ繁殖できません。
そのため、設計段階でいかに雨水から建物を守るかを考えることが、耐久性の基本となります。
例えば、軒を深く出して外壁への雨がかりを減らしたり、適切な水切り金物を設置して雨水の侵入経路を断ったりといった、古くから伝わる建築の知恵が有効です 。
また、地面からの湿気や雨水の跳ね返りの影響を受けやすい土台や柱脚部など、特に劣化のリスクが高い部位には、防腐・防蟻薬剤を加圧注入した木材を使用することが極めて効果的です 。
こうした薬剤処理は、柱や土台といった軸組材だけでなく、構造用合板などの面材にも施すことで、より高い耐久性を確保できます 。
建物の寿命は、材料そのものの強さ以上に、こうした設計上の地道な配慮によって決まるのです。
意外な落とし穴?木造の「音」の問題と遮音対策
木の温もりや柔らかな雰囲気は木造建築の大きな魅力ですが、一方でRC造などの重い構造に比べて「音が伝わりやすい」という特性も持っています 。
特に、静かな環境が求められるオフィスや福祉施設、クリニックなどでは、遮音性能が建物の快適性を左右する重要な要素となります。
この音の問題は、設計段階で事前に対策を講じることが極めて重要です。
例えば、隣室との間の壁には、グラスウールなどの吸音材を隙間なく充填し、さらに石こうボードを二重に張ることで、話し声などの空気音の伝わりを大幅に軽減できます 。
また、上階からの足音などの重量床衝撃音に対しては、床下に吸音材を入れ、防振ゴム付きの支持脚を用いた二重床(浮き床)構造にすることが有効です 。
CLTパネルを床に用いる場合も、それ単体では十分な遮音性能が得られないため、同様の対策が必要となります 。
窓を二重サッシにしたり、気密性の高い防音ドアを採用したりと 、建物全体で総合的な遮音計画を行うことが、快適な音環境を実現する鍵となります。
メンテナンス性も考慮した長期修繕計画の重要性
建物を建てて終わりではなく、竣工後、数十年という長い期間にわたってその価値を維持していくためには、計画的な維持管理、すなわちメンテナンスが不可欠です。
そして、そのメンテナンスのしやすさは、設計段階で大きく左右されます。
例えば、将来的に交換が必要になる屋根や外壁、設備配管などについて、点検や補修がしやすいように点検口を設けたり、メンテナンスルートを確保したりといった配慮が重要です 。
また、外壁など風雨にさらされる部分には、耐久性の高い材料を選定したり、再塗装などのメンテナンスが容易な仕上げ方法を選択したりすることも、長期的な修繕コストの削減に繋がります。
プロジェクトの初期段階で、建物のライフサイクル全体を見据えた長期修繕計画を策定し、それを設計にフィードバックするプロセスを取り入れることが推奨されます。
初期コストは多少増加したとしても、将来のメンテナンスコストを大幅に削減でき、結果として建物のライフサイクルコストを最適化することができるのです。
コストの壁を乗り越える!今こそ活用したい補助金・助成金制度

非住宅の木造化は、単なる建築トレンドではなく、脱炭素社会の実現に向けた国の重要な政策です。
そのため、政府や地方自治体は、木造化に取り組む事業者を力強く後押しするための、多種多様な補助金・助成金制度を用意しています 。
これらの制度を戦略的に活用することは、木造化に伴う初期コストの負担を軽減し、事業の採算性を大きく向上させるための非常に有効な手段です。
特に、CLTのような先進的な技術を導入する場合、その掛増し費用を補助する制度も充実しています。
ここでは、非住宅木造建築プロジェクトで活用できる主要な補助金・助成金制度について、その概要とポイントをご紹介します。
国が後押し!知っておきたい主要な補助金制度
国が主導する非住宅木造化関連の補助金は、複数の省庁から提供されていますが、特に中心となるのが国土交通省と農林水産省(林野庁)の制度です。
国土交通省の代表的な制度が「サステナブル建築物等先導事業(木造先導型)」です 。
これは、構造や防火面で先導的な技術を導入する優良な木造建築プロジェクトを対象に、調査設計費や建設工事費の一部を支援するもので、補助額の上限も数億円規模と大きいのが特徴です 。
一方、農林水産省(林野庁)は「林業・木材産業循環成長対策交付金」などを通じて、商業施設や倉庫といった非住宅建築の木造化・木質化を幅広く支援しています 。
特にCLTを活用したモデル的な建築物への支援は手厚く、部材の調達費用などを直接補助するメニューもあります 。
これらの補助金は公募期間が限られているため、プロジェクトの企画段階から情報を収集し、申請に向けた準備を計画的に進めることが重要です。
ZEB補助金も狙える?環境性能と木造化の相乗効果
木造建築は、それ自体が炭素を固定するという環境価値を持っていますが、省エネルギー性能を高めることで、さらに大きなメリットを得られる可能性があります。
それが、環境省が所管する「建築物等のZEB化・省CO2化普及加速事業」などのZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)関連の補助金です 。
この事業は、建物のエネルギー消費量を大幅に削減するZEB化を支援するものですが、特筆すべきは、CLTなどの新たな木質材料を一定量以上使用するプロジェクトに対して「優先採択枠」を設けている点です 。
これは、木造化とZEB化を同時に進めるプロジェクトが、補助金採択において競争上有利になることを意味します。
木材の高い断熱性能は、建物の省エネ性能向上にも貢献するため、木造化とZEB化は非常に相性の良い組み合わせです。
脱炭素という共通の目標を持つ木造化とZEB化を組み合わせることで、補助金を複合的に活用し、より付加価値の高い建築物を経済的に実現する道が開かれます。
地域産材の活用でさらに有利に!都道府県・市町村の独自制度
国の補助金制度に加えて、各都道府県や市町村が独自に設けている支援制度にも注目すべきです。
これらの制度の多くは、地域経済の活性化や地産地消の促進を目的としており、その地域の「県産材」や「市産材」を一定量以上使用することを条件に、建設費用の一部を補助するものです 。
補助額は自治体によって様々ですが、国の制度との併用が可能な場合も多く、組み合わせることでさらに大きなコスト削減効果が期待できます。
例えば、長野県や高知県など、林業が盛んな地域では特に手厚い支援制度が用意されています。
プロジェクトを計画する際には、建設予定地の都道府県や市町村の林務担当課や建築担当課に問い合わせ、活用できる制度がないかを確認することが非常に重要です。
地域産材を活用することは、コストメリットだけでなく、地域の林業・木材産業に貢献するという社会的な意義もあり、企業のPRにも繋がるという付加価値も生み出します。
まとめ

本記事では、木造非住宅の実現における最大の関心事である「コスト」に焦点を当て、設計段階で考慮すべき具体的な注意点を多角的に解説しました。
結論として、木造非住宅のコストは、決してS造やRC造に劣るものではなく、むしろ設計戦略次第で大きな競争力を持ち得るということです。
その成功の鍵は、以下の3つのポイントに集約されます。
第一に、木造の「軽量性」という最大のメリットを活かし、基礎工事や運搬費を含めた「総工費」でコストを最適化すること。
第二に、スパン計画や材料選定において「一般流通材」を基本とし、木の特性を理解した合理的な構造計画を行うこと。
そして第三に、「都市の木造化推進法」という国策を背景とした多様な「補助金・助成金」を、プロジェクトの企画段階から戦略的に活用することです。
また、設計者にとって大きなハードルとなる防火規制も、告示仕様や大臣認定といった確立された手法でクリアすることが可能です。
さらに、防水・防腐対策や遮音設計といった耐久性・快適性に関わる課題も、初期段階での適切な計画によって十分に克服できます。
「モクプロ」は、建築実務者の皆様が抱えるこうした不安や課題に寄り添い、木造非住宅への挑戦を成功に導くための「ナレッジ」を提供し続けます。
ハウス・ベース株式会社は、皆様のプロジェクトにおける「プロフェッショナルのパートナー」として、専門知識とネットワークを活かしたサポートをお約束します。木造非住宅に関するご相談は、ぜひお気軽にお寄せください。
<特記事項>
法律や条例等は常に改正されていきますし、その解釈や運用については該当の行政窓口や指定検査確認機関等により異なりますので、本記事の内容は「記事掲載時の一般的な考え方」であることのご理解、ご了承をお願いします。
建築実務者の皆様においては、常に最新の法規等の情報をチェックしつつ、該当の行政窓口や指定検査確認機関等によく内容を確認をしてから設計や施工を進めていただくようお願い申し上げます。

ハウス・ベース株式会社の木造化・木質化支援
非住宅用途の建築物で、木造化・木質化の更なる普及が期待されています。
諸問題を解決して、木造化・木質化を実現するには、「木が得意な実務者メンバー」による仕事が必要不可欠です。
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