
これからの建設業界において、新築住宅着工数の減少は避けて通れない現実です。
「住宅一本では先細りするが、非住宅はハードルが高い」そんな悩みを抱える工務店や設計事務所の方も多いのではないでしょうか。
実は、その解決の糸口となるのが「店舗併用住宅」です。
これは単なる住宅と店舗の組み合わせではなく、住宅の知見を活かしながら、成長市場である「木造非住宅」へと事業領域を広げるための最適なステップです。
本記事では、店舗併用住宅を戦略的な「入り口」と捉え、新たな市場で勝ち抜くためのヒントを解説します。
【市場背景】なぜ今、工務店・設計事務所が「非住宅」を目指すべきなのか
長年、住宅建設を主軸にしてきた企業にとって、市場の変化は深刻な課題です。
人口減少に伴い、新築住宅の需要は確実に縮小傾向にあります。
これまでの「待ち」の営業や、従来の住宅商品だけでは、経営を維持することが難しくなりつつあるのです。
しかし、視点を変えれば新たなチャンスが見えてきます。
それが、国を挙げて推進されている「木造非住宅」の分野です。
ここでは、なぜ今、舵を切るべきなのか、市場データと現場の実感を交えて紐解いていきます。
止まらない新築住宅着工数の減少と市場の縮小

少子高齢化の影響により、新築住宅着工戸数は減少の一途をたどっています。
かつてのような大量供給・大量消費の時代は終わりを告げ、住宅市場は完全に「レッドオーシャン」化しています。
多くの工務店が限られたパイを奪い合う中で、価格競争に巻き込まれ、利益率が圧迫されているケースも少なくありません。
この不可逆的な流れの中で生き残るためには、既存の住宅市場にしがみつくのではなく、市場構造の変化を冷静に受け止め、次なる収益の柱を模索する必要があります。
現状維持は、衰退と同義であるという危機感を持つことがスタートラインです。
広がる「木造非住宅」市場というブルーオーシャン

住宅市場が縮小する一方で、急速に拡大しているのが非住宅分野の木造化です。
脱炭素社会の実現に向け、ESG投資やSDGsの観点から、企業や店舗オーナーが「木の建築」を求める声が高まっています。
これまで鉄骨造やRC造が当たり前だった店舗、事務所、医院などが、環境配慮やデザイン性を理由に木造へとシフトしています。
しかし、この需要に対応できる事業者はまだ多くありません。
つまり、ここには広大な「ブルーオーシャン」が広がっているのです。
早期に参入しポジションを確立することで、大きな先行者利益を得られる可能性があります。
参入の壁となる「住宅と非住宅の知識ギャップ」

魅力的な市場であるにもかかわらず、多くの建築実務者が二の足を踏む最大の要因は「知識と経験の不足」です。
「住宅の設計は自信があるが、店舗の法規はよくわからない」「非住宅特有の構造計算や内装制限に対応できるか不安だ」といった声が、ハウス・ベースにも数多く寄せられています。
建築のプロであっても、住宅と非住宅では求められるスキルセットが異なります。
このギャップこそが市場参入の障壁となっていますが、逆に言えば、この壁さえ乗り越えれば、競合他社に大きな差をつけることができるのです。
【戦略】「店舗併用住宅」が非住宅参入の最適な「入り口」である理由

いきなり大規模な商業施設や公共建築に挑むのは、リスクが高すぎると感じるのは当然です。
そこで提案したいのが、「店舗併用住宅」からのスモールスタートです。
カフェや美容室、雑貨店などを併設した住宅は、あくまで「住宅」がベースにあります。
そのため、皆さんがこれまでに培ってきた住宅設計や施工のノウハウを大部分で活かすことができるのです。
無理なく非住宅のエッセンスを取り入れられるこの分野は、まさに工務店経営における戦略的な「入り口」と言えます。
住宅の実績・ノウハウをそのまま活かせる強み

店舗併用住宅の最大のメリットは、建物の過半が「住宅」であるケースが多いことです。
基礎、断熱、気密、仕上げなど、普段通りの施工品質や納まりを適用できる部分が大半を占めます。
そのため、現場監督や職人にとっても心理的な負担が少なく、スムーズに工事を進めることができます。
全く未知の建築物を作るのではなく、「いつもの仕事」の延長線上に新しい要素が加わる形になるため、社内の体制を大きく変えることなく、新しい分野への第一歩を踏み出せる点が大きな魅力です。
小規模な非住宅要素で法規・構造の経験を積む

店舗部分は比較的小規模であることが多いため、非住宅特有の法規制や構造的な課題に、扱いやすいサイズ感で触れることができます。
例えば、店舗の内装制限や、不特定多数の人が利用する場合の避難規定など、純粋な住宅では扱わない法規を、実務を通して学ぶことができます。
いきなり1000㎡を超える建築物でこれらを学ぶのはリスクが高いですが、店舗併用住宅であれば、一つひとつ確認しながらノウハウを蓄積することが可能です。これは、将来的に純粋な非住宅建築を手掛けるための貴重なトレーニングになります。
施主のライフスタイル提案による他社との差別化

店舗併用住宅を建てる施主は、「職住近接」や「自分らしい働き方」を求めています。
単なる箱としての家ではなく、「夢の実現」や「ライフスタイルの質」を重視する傾向にあります。
そのため、工務店や設計事務所には、単なるスペック競争ではなく、施主の想いに寄り添った提案力が求められます。
木造ならではの温かみある店舗デザインや、暮らしと仕事を調和させるプランニングは、大手ハウスメーカーにはない、地域工務店や設計事務所ならではの強みを発揮できる領域です。
【実務の壁】店舗併用住宅における設計・施工の要注意ポイント
店舗併用住宅は参入しやすいとはいえ、やはり「住宅」とは異なる専門知識が必要です。
ここを安易に考えると、法的な是正命令を受けたり、竣工後にクレームにつながったりするリスクがあります。
特に、火災時の安全性に関わる法規や、住む人と利用する人の快適性を守るための性能設計は、住宅以上にシビアな検討が求められます。
ここでは、実務者が特に注意すべき技術的なポイントを整理し、安全で質の高い店舗併用住宅を実現するための要点を解説します。
必ず押さえておきたい「異種用途」と防火規制

店舗併用住宅は、建築基準法上で「異種用途区画」の検討が必要になる場合があります。
住宅部分と店舗部分を防火上どのように区画するか、あるいは店舗の床面積や用途地域によって内装制限がどう変わるかなど、確認すべき法規が多岐にわたります。
特に木造の場合、燃え代設計や準耐火構造の仕様選定など、コストとデザインに直結する判断が必要です。
これらを設計の初期段階で見落とすと、大幅な設計変更を余儀なくされるため、専門的な知見に基づいたチェックが不可欠です。
居住スペースと店舗スペースの「音」と「動線」

「お店の音がうるさくて眠れない」「お客さんの視線が気になってリビングでくつろげない」。
これらは店舗併用住宅で最も多い失敗例です。
木造はRC造に比べて遮音性能の確保が難しいため、床や壁の遮音構造には特別な配慮が必要です。
また、住人のプライベートな動線と、店舗客や搬入業者の動線を明確に分離するプランニングも重要です。
図面上の配置だけでなく、実際の生活時間帯や利用シーンをシミュレーションし、トラブルの芽を事前に摘んでおくことが、顧客満足度を高める鍵となります。
店舗らしい大空間を実現するための構造計画

店舗部分では、商品陳列や客席の配置を自由にするため、柱の少ない大空間や大きな開口部が求められることがよくあります。
住宅スケールのスパン(柱間隔)では対応できない場合、特殊な梁を使用したり、トラス構造を採用したりする等の工夫が必要です。
しかし、これらは一般的なプレカット工場の仕様では対応できないこともあります。
意匠設計の要望を叶えつつ、構造的な安全性を確保するためには、木造非住宅に強い構造設計者やプレカット工場との連携が重要になってきます。
【経営メリット】事業ポートフォリオの多角化と収益性の向上

「店舗併用住宅」への取り組みは、現場のスキルアップだけでなく、工務店経営そのものにも大きなメリットをもたらします。
住宅市場が縮小する中で、一つの事業に依存することはリスクです。
非住宅分野を取り入れることは、事業の柱を増やし、経営を安定させるための「ポートフォリオ戦略」として非常に有効です。
また、店舗建築はデザイン性や機能性が重視されるため、価格競争に陥りにくく、適正な利益を確保しやすいという側面もあります。
経営的な視点から見たメリットを深掘りします。
坪単価アップと高付加価値化による利益確保
一般的な住宅に比べ、店舗部分は特殊な設備や意匠性の高い仕上げが求められるため、坪単価が高くなる傾向にあります。
しかし、それはコストアップであると同時に、付加価値の向上でもあります。
施主は「商売繁盛のための投資」として建築費を捉えるため、提案内容に説得力があれば、安易な値引き競争にはなりません。
高い専門性とデザイン力を提供することで、適正な利益率を確保しやすく、結果として会社の収益性を底上げすることにつながります。
地域密着型の「お店づくり」が呼ぶ新たな顧客
店舗併用住宅を手掛けることは、街に「人の集まる場所」を作ることです。
完成した店舗が地域の人気店になれば、そこを訪れる多くの人々があなたの会社の建てた建物に触れることになります。
「この素敵なカフェを建てたのはどこの工務店?」という口コミは、チラシやWeb広告以上の宣伝効果を持ちます。
施主の商売が成功することは、そのまま工務店の実績としての信頼性向上につながり、新たな住宅や店舗の受注を呼び込む好循環を生み出します。
住宅一本足打法からの脱却と経営の安定化
社会情勢や金利の変動により、住宅需要は大きく波打ちます。
住宅のみに依存していると、不況の波をまともに受けてしまいます。
一方、店舗や事務所などの非住宅需要は、住宅とは異なるサイクルで動くことも多く、リスク分散になります。
店舗併用住宅を足掛かりに非住宅分野の比率を徐々に高めていくことで、外部環境の変化に強い、筋肉質な経営体質へと変革することが可能になります。
これは、永く会社を存続させるための必須条件とも言えるでしょう。
【解決策】「建築のプロ」から「木造非住宅のプロ」へ進化するために

ここまで、店舗併用住宅の可能性と課題について見てきました。
「チャンスなのはわかるが、やはり自社だけで対応できるか不安だ」と感じられた方もいるかもしれません。
その不安は、誠実に建築と向き合っている証拠です。
だからこそ、私たちハウス・ベースは、その「知識・経験のギャップ」を埋めるためのプラットフォーム「モクプロ」を立ち上げました。
皆さんが孤軍奮闘するのではなく、適切なパートナーと共に挑戦できる環境を整えています。
未知の領域への不安を解消する「ナレッジ」の活用
「モクプロ」では、木造非住宅に関する専門知識を体系化した「ナレッジ」を提供しています。
店舗併用住宅に必要な法規の解説から、防耐火構造のディテール、コスト管理のポイントまで、実務に即した情報を網羅しています。
インターネット上の断片的な情報ではなく、プロが実務で使えるレベルに整理された情報を得ることで、学習コストを大幅に下げることができます。
まずはこのメディアを通じて、非住宅の基礎体力をつけていただくことが、成功への近道です。
複雑な法規や構造計算を支える「業務支援」
情報だけでは解決できない個別のプロジェクト課題については、ハウス・ベースが「業務支援」を行います。
広報支援、設計支援、実務支援など、皆さんの黒子のようにサポートします。
具体的な相談に対して、木造非住宅の専門家チームが最適解を導き出します。
ハウス・ベースと共に歩む木造化・木質化の未来
私たちは、工務店や設計事務所の皆さんが主役となって輝くことを目指しています。
木造化・木質化は、脱炭素社会への貢献という社会的意義の高い事業です。
この大きな潮流の中で、皆さんが自信を持って木造非住宅に取り組めるよう、ハウス・ベースは「プロフェッショナルのパートナー」として伴走します。
店舗併用住宅という入り口から、共に新しい市場を切り拓き、地域に愛される素晴らしい木造建築を増やしていきましょう。
まとめ
「店舗併用住宅」は、縮小する住宅市場における工務店・設計事務所の新たな希望です。
住宅のノウハウをベースにしながら、成長する木造非住宅市場への足掛かりを作るこの戦略は、経営の安定化と技術力の向上を同時にもたらします。
もちろん、法規や構造などの専門的な壁は存在しますが、それは決して超えられない壁ではありません。
大切なのは、一人で抱え込まないことです。
「建築のプロ」である皆さんの情熱に、「木造のプロ」であるハウス・ベースの知見を掛け合わせることで、「木造非住宅」の事業を展開することができます。
まずは、情報のアップデートから始めてみませんか?
ハウス・ベース株式会社の木造化・木質化支援
非住宅用途の建築物で、木造化・木質化の更なる普及が期待されています。
諸問題を解決して、木造化・木質化を実現するには、「木が得意な実務者メンバー」による仕事が必要不可欠です。
木造非住宅ソリューションズでは、発注者の課題に対して、最適な支援をご提案します。
ハウス・ベース株式会社は、建築分野の木造化・木質化を支援するサービスである「木造非住宅ソリューションズ」を展開しています。
「木造非住宅ソリューションズ」とは、脱炭素社会実現に向けて、建築物の木造化・木質化に関する課題解決に貢献するための業務支援チームです。
◾️テーマ:「(木造化+木質化)✖️α」→木造化・木質化を追求し、更なる付加価値を創出
◾️活動の主旨:木に不慣れな人・会社を、木が得意な人・会社が支援する仕組みの構築
【主なサービス内容】
◾️広報支援:コンテンツマーケティング、WEBサイト制作、コンテンツ制作等

◾️設計支援 :設計者紹介、計画・設計サポート、設計・申請補助等

◾️実務支援 :木構造支援、施工者紹介、講師等

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