
はじめに:住宅建設の先にある、隠された巨大市場

地域の「家づくりのプロ」である工務店。
その卓越した技術と地域社会への深い理解は、日本の住文化を支える根幹です。
しかし、多くの工務店が主戦場とする住宅市場の先に、これまでほとんど顧みられることのなかった巨大な事業機会が広がっていることをご存知でしょうか。
それは、オフィスや店舗、各種施設といった「非住宅建築」の市場です。
今、建設業界は「脱炭素社会の実現」という、産業革命以来の巨大なパラダイムシフトの渦中にあります。
この不可逆的な潮流は、鉄とコンクリートが主流だった非住宅建築の世界に劇的な変化をもたらし、木造建築に未曾有の追い風を吹かせています。
この変化は、住宅建設のプロフェッショナルである地域工務店にとって、専門外と捉えていた市場が、実は驚くべき「ブルーオーシャン」であったことを明らかにしました。
本記事では、この歴史的転換点において、すべての建設実務者が知るべき「5つの真実」を、データと根拠に基づいて解説します。
貴社の未来を左右する、具体的な事業戦略そのものです。
真実1:市場は飽和していない。実に94%が未開拓の「ブルーオーシャン」

非住宅分野における木造建築のポテンシャルを語る上で、まず直視すべき衝撃的な数字があります。
それは、低層住宅を除く「非住宅・中高層建築物」における木造率(床面積ベース)が、わずか6.2%に過ぎないという事実です。
この数字が意味するのは、残りの93.8%という圧倒的な市場が、現在も鉄筋コンクリート(RC)造や鉄骨(S)造によって占められているということです。
これは市場の飽和ではなく、むしろ供給が全く追いついていない「巨大な空白地帯」が存在することを示しています。
法規制の緩和や技術革新により、本来であれば木造で十分に建設可能であるにもかかわらず、慣習や供給側の体制不足によって、その潜在能力が眠ったままになっているのです。
特に、この未開拓市場の機会が最も大きいのは、以下の分野です。
- オフィスビル:企業のESG投資意欲の高まりを受け、自社ビルの木造化ニーズが急増しています。
- 教育・保育施設:幼稚園や保育園に加え、学習塾や専門学校などでの需要が高まっています。
- 医療・福祉施設:居住性に近い性能が求められるクリニックや高齢者施設は、木造と極めて高い親和性を持ちます。
- 商業施設:郊外型店舗から都市部の中層ビルまで、デザインによる差別化の観点から木造への注目が集まっています。
「6.2%」という数字は、脅威ではなく、これからの成長余地そのものです。
建築主の「木造で建てたい」という潜在的な需要に応えられるプレイヤーが、まだほとんどいない。
これは、市場が飽和する前に参入する先駆者にとって、強力かつ持続可能な競争優位性を築く絶好の機会が目の前にあることを示しています。
真実2:ゲームのルールが「木造有利」に変わる

これまで漠然としたトレンドであった木造化の流れを、不可逆的なものにする決定的なゲームチェンジが起きました。
それが、2025年4月に施行された「改正建築物省エネ法」です。
この法改正の最大のインパクトは、これまで中規模の非住宅建築物(300㎡〜2,000㎡)では「届出義務」に過ぎなかった省エネ基準への適合が、「適合義務」へと強化された点にあります。
つまり、2025年以降は省エネ基準を満たさなければ建築確認が下りず、着工そのものができなくなるのです。
この規制強化は、鉄骨造やRC造にとっては実質的なコストアップ要因となります。
熱が逃げやすい熱橋(ヒートブリッジ)対策や、より分厚い断熱材の追加など、これまで以上の対策が必要になるためです。
これは、競合するS造・RC造の事業者が、これまで通りのコスト感では事業を継続できなくなる可能性を意味します。
一方で、木材はそれ自体が優れた断熱性能を持つ素材です。
多くの地域工務店が住宅建築で培ってきた高気密・高断熱のノウハウは、この新しいルールにおいて強力な武器となります。
省エネ基準の厳格化は、木造建築の相対的な競争優位性を一気に高める、まさに強力な「追い風」として作用するのです。
これは避けるべき規制ではなく、ライバルに対する「向かい風」を最大限に活用する事業機会と言えます。

真実3:「建てる」だけではない。地域経済を3.5倍潤す投資になる

地域工務店が非住宅建築を木造で、しかも地元の木材を使って建てることの価値は、単に一つの建物が完成することに留まりません。
それは、地域経済全体を活性化させる「投資行為」そのものとなります。
ある産業連関分析を用いた研究では、この事実が驚くべき数値で示されました。
木材の調達から加工、消費までのプロセスを分析した結果、地域の木材を地域で使う「地産地消型シナリオ」がもたらす経済波及効果(生産誘発額)は、建材を地域外や輸入に頼る場合に比べて、約3.5倍に達することが明らかになったのです。
このメカニズムは明快です。
鉄骨やコンクリートの建設資金は、その原料を供給する大手メーカーや国際的なサプライヤーへと「地域外へ流出」してしまいます。
しかし、地元の木材を使えば、その資金は地域の森林所有者、林業従事者、製材・加工業者へと還流し、再び「地域内で循環」を始めます。
まさに地域材の活用は、地域経済の資本を外部に漏らさないための「防波堤」の役割を果たすのです。
この点を理解すれば、工務店の提案は変わります。
単なる「建設会社の営業」から、「地域経済の循環を担う戦略的パートナー」としての提案が可能になるのです。
これは、他の誰にも真似のできない、地域工務店だけが持つ最大の強みです。
真実4:本当の壁は技術力ではない。「4号特例」からの思考の転換

多くの住宅専門の工務店が非住宅分野への参入をためらう最大の理由、それは「技術的な壁」への不安でしょう。
特に、構造計算に対するハードルは高いと感じられているかもしれません。
日本の木造住宅の多くは、小規模な木造住宅(4号建築物)の構造計算書の提出を省略できる「4号特例」というルールのもとで建てられてきました。
簡易な壁量計算や仕様規定に頼るこの方法は、多くの実務者にとっての「快適な領域(コンフォートゾーン)」であったと言えます。
しかし、中大規模の非住宅建築ではこの特例は適用されず、許容応力計算などの厳密な構造計算が必須となります。
このギャップこそが、参入を阻む心理的な壁の正体です。
ただし、これを乗り越えられない「技術力の欠如」と捉えるのは早計です。
これはむしろ、社内体制や業務フローといった「構造的・手続き的なギャップ」の問題です。
この課題は、自社だけですべてを抱え込む必要はありません。
非住宅に強い構造設計事務所やサプライヤーと連携し、自社の強み(施工管理、地域での信頼)に集中する「専門家パートナー・エコシステム」を構築することが極めて有効です。
課題を正しく認識し、自前主義から脱却すること。
それが、この壁を乗り越えるための第一歩です。

真実5:文字通り、挑戦には「資金」が出る

非住宅木造への挑戦は、精神論や自己投資だけで乗り越えるものではありません。
国や自治体は、この重要なシフトを強力に後押しするため、極めて手厚い補助金・助成制度を用意しています。
これを戦略的に活用しない手はありません。
その代表例が、東京都が実施する「中・大規模建築物の木造木質化支援事業」です。その支援規模は衝撃的です。
- 設計支援:実施設計費用の1/2を補助(上限5,000万円)
- 工事支援:木造化にかかる工事費の1/2等を補助(上限5億円)
この制度の最も戦略的な点は、リスクの高い「設計段階」から補助金が交付されることです。
これは、顧客にとって最大の懸念である「馴染みのない工法に対する初期設計コスト」という最初の販売ハードルを取り除く、極めて強力な営業ツールとなります。
この制度を活用すれば、工務店は顧客の初期リスクを劇的に低減させ、「コストが少し高くても木造で」という経営判断を強力に後押しできるのです。
これは東京の例ですが、全国レベルでも林野庁の「JAS構造材実証支援事業」など、活用できる制度は数多く存在します。
未知の領域への挑戦には、リスクを低減するための具体的な「資金」が用意されているのです。
結論:あなたの街を、木で再構築する

本記事で解説したのは、貴社の事業モデル変革を促す5つの重要な市場シグナルです。
- 市場の94%は、まだ誰もいない広大なブルーオーシャンである。
- 2025年の法改正は、木造に強力な追い風を吹かせる。
- 地元の木材利用は、地域経済を3.5倍潤す投資となる。
- 本当の壁はスキル不足ではなく、思考と体制の転換で乗り越えられる。
- 挑戦のリスクを劇的に下げる、手厚い資金援助が存在する。
チャンス、追い風、そして資金はすべて揃いました。
これまで住宅のプロフェッショナルとして地域を支えてきた工務店が、その技術と信頼を携え、地域の脱炭素化と経済循環を担う新たなリーダーへと進化する、歴史的な好機が到来しています。

ハウス・ベース株式会社の木造化・木質化支援
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