
近年、新設される「高齢者施設(サ高住、特養など)」や「保育園・幼稚園」において、木造を採用するケースが急増しています。
かつては「火災に強い」「耐久性が高い」という理由でRC造(鉄筋コンクリート造)一択だった福祉・教育施設分野。
なぜ今、あえて木造へのシフトが起きているのでしょうか?
その背景には、単なる「脱炭素トレンド」だけではない、事業者にとっての切実な「経営課題」を解決する合理的な理由があります。
今回は、木造化がもたらす「居住性」と「コスト」、そして補助金活用に不可欠な「工期」のメリットを紐解き、選ばれる施設の条件を探ります。
経営視点:施設選びの決め手は「脱・病院感」
事業者にとって最大の課題は、施設の「稼働率(入居率・園児確保)」です。
少子高齢化で競争が激化する中、利用者の家族が施設を選ぶ基準が変化しています。
「施設」から「住まい」へ
かつての高齢者施設は「管理しやすい病院のような空間」が主流でした。
しかし現在は、終の棲家としての「家庭的な温かみ」が求められています。
冷たいコンクリートや塩ビシートの床ではなく、木の柱が見え、木目の温もりがある空間は、「ここなら穏やかに暮らせそう」という安心感を与え、入居決定の強力な動機付け(差別化要因)となります。
保護者が求める「育ちの環境」
保育園においても同様です。
0〜6歳の感性が育つ時期に、「自然素材に触れさせたい」「安全な環境で遊ばせたい」と願う保護者は多く、木造園舎であること自体が園のブランディングになります。
科学的視点:転倒リスクとウイルス対策
見た目だけでなく、木材の物理的な特性が、福祉・教育現場の事故防止や健康管理に直結します。
衝撃吸収性:転んでも痛くない床
高齢者や幼児にとって、最大の事故リスクは「転倒」です。
RC造のコンクリートスラブに直貼りした床は硬く、転倒時の衝撃が骨折に繋がるリスクがあります。
一方、木造の床組は適度な弾力性(たわみ)を持っており、転倒時の衝撃(G)を緩和します。
骨折リスクを下げ、大怪我を防ぐことは、運営側の安全管理リスクの低減にもつながります。
熱伝導率:冷えを防ぎ、活動量を上げる
木材はコンクリートや鉄に比べ、圧倒的に熱伝導率が低い(熱を奪いにくい)素材です。
ハイハイをする乳幼児や、足腰が冷えやすい高齢者にとって、床の冷たさは活動意欲を削ぐ大敵です。
「床が冷たくない」ことは、そのまま活動量の向上や免疫力維持に寄与します。
補助金と工期:「年度内竣工」という壁を越える
福祉・教育施設の建設において避けて通れないのが、「補助金の活用」です。
木造は、この補助金事業と極めて相性が良いという実務的なメリットがあります。
施設整備費補助の獲得
現在、厚労省やこども家庭庁、国交省などから、施設整備に対する多額の補助金が出ています。
特に近年は「木造化・木質化」に対する加算や、環境配慮型建築(ZEB等)への上乗せ補助が手厚くなっています。
建設費が高騰する中、これらの補助金をフル活用することで、事業収支を大きく改善できます。
「3月末までに完成」を可能にする短工期
補助金事業の多くは単年度予算であり、原則として「年度内(3月末まで)に工事を完了し、引き渡しを受けること」が必須条件となります。
しかし、補助金の交付決定は5-6月頃であり、決定後に確認申請等を行うため、実際の工期は6-7ヶ月程度のことがほとんどです。
- RC造の場合: コンクリートの養生期間が必要で、冬場の施工は硬化にさらに時間がかかります。「交付決定から半年で竣工」というのは物理的に厳しく、補助金を諦めるか、無理な突貫工事になるリスクがあります。
- 木造の場合: 工場で加工された材を組み立てる乾式工法がメインのため、現場の工期が圧倒的に短いのが特徴です。また、冬場の施工でも品質が左右されにくいため、タイトなスケジュールでも年度内竣工を実現できる可能性が高まります。
「RC造では工期が間に合わないが、木造なら間に合う」。
これが、現場で木造が選ばれる決定的な理由になることも少なくありません。
コストと財務:安く建てて、早く償却する
工期以外のコスト面でも、木造には明確な優位性があります。
基礎コストの削減
RC造から木造に変更することで、建物重量が約1/3〜1/4に軽量化されます。
これにより、地盤改良費や基礎工事費を大幅に圧縮できる可能性があります。
減価償却による節税効果
経営者にとって大きいのが「減価償却期間」の違いです。
- RC造:47年
- 木造:22年 木造は法定耐用年数が短いため、単年度に計上できる減価償却費が大きくなります。 利益が出ている法人にとっては、早期に建築費を経費化でき、キャッシュフローを改善できるという強力な節税メリットがあります。
まとめ:木造化は「三方よし」の経営戦略
高齢者施設や保育園の木造化は、単なるコストダウンの手段ではありません。
- 利用者(家族): 快適で安全な「選ばれる」施設になる。
- 経営者: 補助金活用と短工期で、事業リスクを最小化できる。
- 職員: 足腰の負担が少なく、長く働ける職場になる。
まさに「三方よし」の選択と言えます。
しかし、これらの施設は、多くの人が利用する特殊建築物であり、厳しい「防耐火規制」をクリアする必要があります。
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