【鉄骨造→木造】設計変更のポイントは?「木造化」のフローと注意点

【鉄骨造→木造】設計変更のポイントは?「木造化」のフローと注意点

「コストダウンのために、鉄骨造から木造に変更できないか?」

「地盤が悪いから、軽量な木造で再検討してほしい」

プロジェクトの途中、あるいは基本設計が完了した段階で、施主からこのような要望が出るケースが増えています。

脱炭素やコスト調整の観点から「木造化」は有効な選択肢ですが、設計者にとっては大きなハードルがあります。

それは、「鉄骨造の図面を、そのまま木造に置き換えることはできない」という事実です。

鉄骨造と木造では、モジュール、構造グリッド、そして断面寸法の考え方が根本的に異なります。

無理に鉄骨造のプランのまま木造にしようとすると、構造的に成立しなかったり、コストが逆に上がったりする恐れがあります。

今回は、鉄骨造から木造へ変更する際、図面のどこをどう修正すべきか?

その「変換のポイント」と具体的なフローを解説します。


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最大の違いは「グリッド」と「壁」

鉄骨造から木造への変更で最も頭を悩ませるのは、平面計画(プラン)の修正です。

鉄骨造の感覚のまま木造に取り組むと、以下の壁にぶつかります。

① スパンとグリッドの再構築

鉄骨造では6m〜8m程度のスパンを自由に飛ばせますが、木造(特に流通材を使う在来軸組工法)では、梁の定尺や強度の関係から、基本グリッド(910mm、1000mmなど)を意識した柱配置がコストダウンの鍵となります。

  • 鉄骨造思考: 必要な場所にだけ柱を置く(大空間が得意)。
  • 木造思考: 一定の間隔(3〜4m程度)で柱や耐力壁をバランスよく配置する。

このため、鉄骨造の図面では柱がなかった場所に、木造では柱が必要になるケースが出てきます。

「部屋の真ん中に柱が出てしまう」ことを避けるために、トラス構造や大断面集成材を使うか、プラン自体を微調整するかの判断が必要になります。

② 壁厚の変化(有効寸法に注意)

「木造は柱が細いから、部屋が広くなる」と思われがちですが、非住宅木造では逆のことが起こり得ます。

耐火・準耐火建築物にする場合、石膏ボードの複数枚張り(メンブレン)が必要となり、壁厚が鉄骨造のLGS下地よりも厚くなることがあります。

特に、廊下幅やトイレの有効寸法がギリギリで設計されている場合、木造化によって有効幅が確保できなくなるリスクがあるため、詳細な壁厚の再計算が不可欠です。


断面計画の落とし穴:「梁せい」と「設備」

平面図ができても、次に問題になるのが断面図(高さ関係)です。

① 梁せいの増大

一般的に、同じスパンを飛ばす場合、鉄骨梁よりも木造梁の方が「梁せい(高さ)」は大きくなります。

例えば、鉄骨造なら400mmで済んだ梁が、木造では600mm〜900mm必要になることもあります。

これにより、天井高が確保できなくなったり、建物全体の高さ制限(斜線制限)に抵触したりする可能性があります。

② 設備ルートの確保

鉄骨造では梁にスリーブ(貫通孔)を開けてダクトを通すことが一般的ですが、木造の梁、特に大断面の梁に大きな穴を開けることは、断面欠損として構造耐力に大きく影響するため、慎重な検討が必要です。

  • 対策: 梁の下に配管スペースを確保する(階高を上げる)。
  • 対策: ふかし壁やパイプシャフトを増設し、梁を貫通させないルートに変更する。

「鉄骨造の断面図のまま進めていたら、現場でダクトが通らないことが発覚した」というのは、木造化ビギナーによくある失敗です。


失敗しない「木造化」実施設計のフロー

手戻りを防ぎ、スムーズにS造から木造へ移行するための推奨フローをご紹介します。

STEP 1:構造ボリューム検討(フィジビリティスタディ)

意匠図を書き直す前に、まずは構造のプロに相談し、「このスパンは木造で飛ぶのか?」「柱はどこに追加が必要か?」の当たりをつけます。

木構造メーカー各社は、この段階でのラフな構造計画作成や、架構計画の提案を行っています。

STEP 2:グリッドとプランの調整

構造検討の結果をもとに、平面図を修正します。

  • 柱位置の変更(邪魔な柱を壁の中に隠せないか?)
  • 耐力壁線(通り芯)の整理し、この段階で、コストバランス(流通材でいくか、特殊材を使うか)も決定します。

STEP 3:防耐火仕様と断面の整合

用途と規模に応じた防耐火構造(1時間耐火、準耐火など)を確定させ、壁厚や天井構成を決定します。

同時に、梁せいを含めた階高の再設定を行い、法的な高さ制限をクリアできるか確認します。

STEP 4:設備ルートの確定

木造の構造体に干渉しない設備ルートを確保します。

必要であれば、部分的なプラン変更を行い、PS(パイプスペース)を追加します。


「木造化」はプロとの連携でスムーズに

鉄骨造から木造への変更は、単なる「図面の書き換え」ではなく、「建物の再構築」に近い作業です。

慣れない木造の法規や構造特性に一人で悩み、時間を浪費してしまうのは非常にもったいないことです。

木構造メーカー各社は、建築実務者の皆様の「木造化パートナー」として、以下のサポートを提供しています。

  • 鉄骨造図面からの木造化可否診断
  • 構造・防耐火を考慮したプラン変更のアドバイス
  • コストメリットが出る架構計画の提案

「鉄骨造で進んでいたプロジェクトだが、木造の可能性も探りたい」

そんな時は、図面変更に着手する前に、まずは一度ご相談ください。

ご相談内容に応じて、最適な木構造メーカーをご紹介します。

構造と意匠の両面から、最適な「木造化への道筋」をご案内します。

ハウス・ベース株式会社の木造化・木質化支援

非住宅用途の建築物で、木造化・木質化の更なる普及が期待されています。

諸問題を解決して、木造化・木質化を実現するには、「木が得意な実務者メンバー」による仕事が必要不可欠です。

木造非住宅ソリューションズでは、発注者の課題に対して、最適な支援をご提案します。

ハウス・ベース株式会社は、建築分野の木造化・木質化を支援するサービスである「木造非住宅ソリューションズ」を展開しています。

「木造非住宅ソリューションズ」とは、脱炭素社会実現に向けて、建築物の木造化・木質化に関する課題解決に貢献するための業務支援チームです。

◾️テーマ:「(木造化+木質化)✖️α」→木造化・木質化を追求し、更なる付加価値を創出

◾️活動の主旨:木に不慣れな人・会社を、木が得意な人・会社が支援する仕組みの構築

【主なサービス内容】

◾️広報支援:コンテンツマーケティング、WEBサイト制作、コンテンツ制作等

◾️設計支援 :設計者紹介、計画・設計サポート、設計・申請補助等

◾️実務支援 :木構造支援、施工者紹介、講師等

木造化・木質化で専門家の知見が必要な場合は、ぜひハウス・ベース株式会社までお気軽にお問合せください。

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著者

一級建築士。群馬県出身。芝浦工業大学卒業後、設計事務所・工務店・木構造材メーカー勤務を経て、2015年にハウス・ベース株式会社を起業。事業内容:住宅・建築関連の業務支援。特に非住宅用途の木造化・木質化支援(広報支援・設計支援・実務支援)に注力。木造非住宅オウンドメディア「モクプロ」を運営。

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