【コスト比較】非住宅は木造かS造か?坪単価だけで語れない真実

【コスト比較】非住宅は木造かS造か?坪単価だけで語れない真実

「ウッドショックも落ち着き、やはり木造の方がコストを抑えられるのでしょうか?」

非住宅案件の計画時、施主からこのように尋ねられ、回答に窮したことはないでしょうか。 

一般的に、戸建住宅のイメージから「木造=ローコスト」という認識が浸透していますが、中大規模な非住宅建築において、その方程式は必ずしも当てはまりません。

S造(鉄骨造)で計画していたものを木造に置き換えた結果、「意外と安くならなかった」、あるいは「逆に高くなってしまった」というケースも実際に存在します。

しかし、「坪単価」などの表面的な建設費だけで判断するのは早計です。

非住宅の木造化におけるコスト比較は、躯体費だけでなく、地盤、基礎、工期、そして完成後の税制メリットまで含めた「事業トータルコスト」で判断する必要があります。 

今回は、S造と木造、それぞれのコスト構造の違いを解き明かし、木造化でメリットが出る「勝ちパターン」を解説します。


INDEX

1. 「木造は安い」は本当か?非住宅におけるコスト構造の違い

まず、実務者が最初に押さえておくべき前提があります。

それは、「住宅の木造と、非住宅の木造は、コストの掛かり方が全く違う」ということです。

住宅(特に4号建築物など)は、構造計算や内装制限の緩和が多く、コストを極限まで抑える工法が確立されています。

一方、一定規模以上の非住宅(店舗、事務所、倉庫等)になると、法的な要求レベルが格段に上がります。

  • 構造強度の確保: 大きな空間(スパン)を飛ばすための柱・梁断面の増大、特殊金物の使用
  • 防耐火要件: 「燃えしろ設計」による断面増、または石膏ボードの複数枚張り(被覆)

これらの要素により、単純な「構造躯体」の単価だけで比較すると、S造と木造の差は縮まるか、仕様によっては木造の方が手間がかかる分、割高に見えることさえあります。

では、なぜ今、多くの企業や事業主が「木造」を選ぶのでしょうか?

それは、内訳を細かく見ていくと、S造では絶対に削れないコストを、木造なら大幅にカットできる可能性があるからです。


2. S造 vs 木造:コストを左右する「4つの変動要因」

コスト比較の精度を上げるために重要な、4つの比較ポイントを整理しました。

要因1:構造躯体費(S造の変動 vs 木造の安定)

S造の最大の懸念点は「鋼材価格の変動リスク」です。

国際情勢や為替の影響を受けやすく、見積もり時と発注時で価格が跳ね上がるリスクがあります。

 一方、木造(特に国産材の一般流通材)は、比較的価格が安定しています。

また、プレカット工場での加工費も計算が立ちやすく、予算管理(コストコントロール)がしやすいという点は、プロにとって大きなメリットです。

要因2:基礎・地盤改良費(木造最大の強み)

ここが最も重要な「逆転ポイント」です。 

木造の建物重量は、S造の約1/3〜1/4と圧倒的に軽量です。

  • S造の場合: 建物の自重が重いため、地盤が少しでも弱いと高額な「杭工事」や大規模な地盤改良が必要になります。
  • 木造の場合: 建物が軽いため、S造なら杭が必要な地盤でも、「ベタ基礎」や安価な「表層改良」で済むケースが多々あります。

上屋(建物本体)のコストが同等、あるいは木造が若干高くても、「地中のコスト」で数百万円〜数千万円単位の差がつき、トータルで木造が安くなる。これが最も典型的な成功パターンです。

要因3:防耐火・内装費(木造のコスト増要因)

逆に、木造でコストアップしやすいのがこの部分です。 

耐火建築物や準耐火建築物にする際、木造には以下のいずれかの対応が求められます。

  1. メンブレン型(被覆): 柱や梁を石膏ボード等で覆う。材料費と大工手間が増える。
  2. 燃えしろ設計(現し): 木材を太くして、燃えても芯が残るようにする。木材ボリュームが増える。

S造であれば鉄骨に耐火被覆を吹く作業で済みますが、木造の場合は下地組やボード貼りの工程が増えるため、内装工事費はS造より高くなる傾向があります。

この増額分を、基礎や躯体でどうカバーするかが設計の腕の見せ所です。

要因4:工期と仮設費(プレカットの恩恵)

木造非住宅は、あらかじめ工場で加工された木材を現場で組み立てるため、建て方(躯体工事)のスピードがS造やRC造に比べて圧倒的に早いのが特徴です。 

工期が短縮されれば、その分だけ現場管理費や、足場・仮設トイレなどのリース代(仮設費)を圧縮できます。


3. シミュレーション:トータルコストで逆転する分岐点

これまでの要素を総合すると、木造化によるコストメリットが出やすいのは以下のようなプロジェクトです。

【木造化でコストダウンが狙える条件】

  • 地盤があまり良くない場所(基礎コストの大幅減が期待できる)
  • 流通材(一般的な寸法の木材)で構成できるスパン・規模
  • 工期を急いでいる案件

逆に、超大空間や高層建築など、特殊な集成材や技術が必要な場合はS造の方が合理的な場合もあります。 

「S造一択」と決めつける前に、「もし木造にしたら基礎はどうなるか?」という視点でシミュレーションを行うことが、施主の利益を守ることにつながります。


4. 「見えないコスト」のメリット:減価償却と補助金

イニシャルコスト(建設費)だけでなく、事業収支全体のコストメリットも忘れてはいけません。

施主(事業主)にとって強力な説得材料になります。

税制メリット(減価償却)

法定耐用年数は、S造(重量鉄骨)が34年であるのに対し、木造は22年(店舗・住宅)または24年(事務所)です。 

耐用年数が短いということは、単年度に経費計上できる減価償却費が大きくなることを意味します。

利益が出ている企業にとっては、早期に投資額を損金算入でき、高い節税効果(キャッシュフローの改善)が見込めます。

豊富な補助金制度

脱炭素社会の実現に向け、国(国交省・環境省・林野庁)は木造建築に対して手厚い補助金を用意しています。

 S造にはない「木造化・木質化」特有の補助金を活用することで、実質的な建設コストをS造以下に抑えられるケースも少なくありません。


5. まとめ:概算段階での「比較検討」がプロジェクトを救う

非住宅において「木造か、S造か」の答えは、建設地や用途によって変わります。

だからこそ、「S造ありき」で進めてしまい、実施設計の段階で予算オーバーになり身動きが取れなくなることだけは避けなければなりません。

もっとも効果的なのは、企画・基本設計の早い段階で「木造化の概算シミュレーション」を行うことです。

  • この地盤なら、木造にすれば基礎代がこれだけ浮く。
  • 補助金を使えば、実質負担はS造より安くなる。
  • 減価償却を含めれば、10年スパンでの事業収支は木造が有利。

こうした多角的な視点を持つことで、貴社の提案力は飛躍的に向上します。

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著者

一級建築士。群馬県出身。芝浦工業大学卒業後、設計事務所・工務店・木構造材メーカー勤務を経て、2015年にハウス・ベース株式会社を起業。事業内容:住宅・建築関連の業務支援。特に非住宅用途の木造化・木質化支援(広報支援・設計支援・実務支援)に注力。木造非住宅オウンドメディア「モクプロ」を運営。

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