【書評】「DLT新しい木質材料が語る「持続可能な社会」のあり方」

【書評】「DLT新しい木質材料が語る「持続可能な社会」のあり方」

脱炭素社会の実現に向け、建築業界では「木造化・木質化」が急務です。

2025年の年末に注目の書籍が出版されました。

老舗材木屋「長谷萬」の四代目・長谷川泰治氏と、DLT研究の第一人者・法政大学教授 網野禎昭氏による、日本初のDLT解説書です。

素材技術だけでなく、森林資源・地域経済・カーボンニュートラル・デザインといった文脈から、「木がつくる未来社会」の全体像を描きます。

建築・林業・製造業の関係者はもちろん、行政・自治体・デザイン関係者、そしてサステナビリティに関心を持つすべての人に、読んで欲しいと思います。

本書のテーマ「DLT(Dowel Laminated Timber)」は、接着剤を一切使わない革新的な木質素材です。

単なる建材スペックの解説だけではなく、本書に記された「これからの時代を生き抜くビジネスのヒント」など、読んだ感想をお伝えします。

「DLT新しい木質材料が語る「持続可能な社会」のあり方」
INDEX

1. 本書が語るビジネスの本質。「他と違うこと」に価値がある

ローテク、多品種少量生産…長谷川社長の言葉が示す未来 

本書で印象的だったのは、長谷川社長の経営哲学を表すキーワードの数々にあります。

< アインシュタインの言葉>

「私たちは手段が完璧で目的が支離滅裂な時代を生きている」

を引用し、技術過多な現代に警鐘を鳴らします。

そこでハセマン様が選んだのは、最先端でありながら木と木を留めるだけの「ローテク(シンプルテック)」でした。

これこそが脱炭素時代の「エシカル(倫理的)」な選択だと説きます。

また、製造においては大量生産ではなく、職人チームによる「セル生産方式」を採用。

これにより、個別の建築ニーズに応える「多品種少量生産」を実現しました。

これは、画一的な商品を売るのではなく、顧客に寄り添う「マーケティングコンセプト」の転換でもあります。

リスクを恐れず「他と違うことをやるほうに価値がある」と説く姿勢は、変革期にある私たち建築実務者に、進むべき方向を指し示しています。

2. 「接着剤を使わない」衝撃。DLTの仕組みと「真のエコ」

木のダボと摩擦力だけでつくる、100%自然素材の革新性 

その哲学を具現化したプロダクトが「DLT」です。 

CLTなどの新材料が登場する中、DLTは「接着剤不使用」という決定的な違いを持っています。

製材を並べ、乾燥した「木のダボ」を差し込み、強度を保つ仕組みです。

化学物質を使わないため、シックハウスの心配がなく、製造から廃棄、リサイクルに至るまで環境負荷が極めて低いのが特徴です。

著者が欧州で見出し、日本の気候に合わせて実用化したDLTは、製造過程も含めた「真のサステナビリティ」を実現する稀有な建材です。

3. 設計・施工のプロが選ぶべき「DLT」の実践的メリット

意匠×構造×コスト。国産材活用の課題を解決する力 

DLTは「環境に良い」だけでなく、実務的なメリットも強大です。

・意匠性: 積層面をそのまま「現し(あらわし)」仕上げに使え、木特有の美しいリズムが空間を演出します。

・地域材活用: 一般流通材(中小径木)をパネル化するため、特殊な木材が不要。「地産地消」の建築を容易にします。

・機能と施工: 吸音・調湿効果が高く、プレカットによる短工期を実現します。

「隠す構造」から「見せる構造」へ。

デザインとコスト、そして環境性能を高い次元で両立できるDLTは、非住宅木造の提案力を飛躍的に高めます。

株式会社長谷川萬治商店がDLT製造を行った「DLT木造仮設住宅」が、2025年度グッドデザイン賞大賞を受賞されており、大きな注目を集めています。

まとめ

「効率」よりも「循環」や「個別のニーズ」を重視し、「他と違うこと」に価値を見出す。

そのビジネス哲学が結晶化したものが、接着剤を使わないシンプルで美しい建材、DLTです。

非住宅木造への挑戦は不安も伴いますが、こうした明確な「想い」と「技術」のある建材を知ることは、大きな自信になります。

まだ「木造のプロ」ではないと感じている方こそ、ぜひ本書を手に取ってみてください。

新しい木造建築の可能性を、共に広げていきましょう。

「DLT 新しい木質材料が語る「持続可能な社会」のあり方」

【260217木造化・木質化勉強会】「DLT(木ダボ接合積層材)」

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ハウス・ベース株式会社の木造化・木質化支援

非住宅用途の建築物で、木造化・木質化の更なる普及が期待されています。

諸問題を解決して、木造化・木質化を実現するには、「木が得意な実務者メンバー」による仕事が必要不可欠です。

木造非住宅ソリューションズでは、発注者の課題に対して、最適な支援をご提案します。

ハウス・ベース株式会社は、建築分野の木造化・木質化を支援するサービスである「木造非住宅ソリューションズ」を展開しています。

「木造非住宅ソリューションズ」とは、脱炭素社会実現に向けて、建築物の木造化・木質化に関する課題解決に貢献するための業務支援チームです。

◾️テーマ:「(木造化+木質化)✖️α」→木造化・木質化を追求し、更なる付加価値を創出

◾️活動の主旨:木に不慣れな人・会社を、木が得意な人・会社が支援する仕組みの構築

【主なサービス内容】

◾️広報支援:コンテンツマーケティング、WEBサイト制作、コンテンツ制作等

◾️設計支援 :設計者紹介、計画・設計サポート、設計・申請補助等

◾️実務支援 :木構造支援、施工者紹介、講師等

木造化・木質化で専門家の知見が必要な場合は、ぜひハウス・ベース株式会社までお気軽にお問合せください。

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著者

一級建築士。群馬県出身。芝浦工業大学卒業後、設計事務所・工務店・木構造材メーカー勤務を経て、2015年にハウス・ベース株式会社を起業。事業内容:住宅・建築関連の業務支援。特に非住宅用途の木造化・木質化支援(広報支援・設計支援・実務支援)に注力。木造非住宅オウンドメディア「モクプロ」を運営。

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