
日本の建設業界は今、かつてない大きな転換期を迎えています。
長年、業界を支えてきた新設住宅着工戸数は、人口減少とともに減少の一途をたどっています。
多くの工務店や建設会社様が、「これまでの住宅一本の経営モデルで、会社を維持できるだろうか?」という漠然とした、しかし深い不安を抱えているのではないでしょうか。
この不安は、決して皆様だけのものではありません。
しかし、視点を少し変えれば、そこには広大なブルーオーシャンが広がっています。
それが、「木造非住宅」の分野です。
世界的な脱炭素社会へのシフトに伴い、オフィス、店舗、福祉施設、教育施設など、これまで鉄骨造(S造)や鉄筋コンクリート造(RC造)が当たり前だった建物が、次々と「木造化・木質化」されています。
この潮流は一過性のブームではなく、国策も絡んだ不可逆な時代の流れです。
本記事では、なぜ今、工務店が非住宅分野へ参入すべきなのか、その明確な理由とメリットを解説します。
そして、多くの実務者が抱える「住宅は得意だが、非住宅のノウハウがない」という「知識・経験のギャップ」に対しては、外部の会社による業務支援を活用する方法もあります。
新たな収益の柱を築くための第一歩を、ここから踏み出しましょう。
縮小する住宅市場と拡大する木造非住宅のブルーオーシャン

人口減少と少子高齢化が進む日本において、新設住宅着工戸数の減少は避けられない現実です。
野村総合研究所などの予測でも、2030年、2040年に向けて市場規模は確実に縮小していくとされています。
これまで通りの住宅営業だけでは、売上の維持すら難しくなる時代が目の前に迫っています。
経営者や事業責任者の皆様にとって、既存事業のシェア争いだけでなく、「次なる収益源」を確保することは喫緊の課題と言えるでしょう。
そこで注目すべきなのが、非住宅分野における木造建築の可能性です。
この章では、市場環境の変化と、そこに眠るチャンスについて紐解きます。
住宅着工戸数の減少と建設業界の未来予測
高度経済成長期から続いてきた「作れば売れる」時代は終わりを告げました。
人口動態の変化に伴い、新築住宅への需要は構造的に減少しています。
リフォームやリノベーション市場へのシフトも進んでいますが、新築工事を主体としてきた工務店にとっては、事業構造の転換が求められる局面です。
一方で、建設業界全体の人手不足や資材高騰といった課題も深刻化しており、工務店は「少ないパイを奪い合う」厳しい競争環境に置かれています。
しかし、建物への需要が完全になくなるわけではありません。
人々が集う場所、働く場所、学ぶ場所としての「非住宅建築」の需要は、形を変えながら存続します。
重要なのは、縮小する市場にしがみつくのではなく、成長が見込める市場へと軸足をシフト、あるいは多角化させる経営判断です。
住宅で培った木造技術を活かせるフィールドは、実は住宅以外にも大きく広がっているのです。
なぜ今、非住宅なのか?手つかずの巨大市場
これまで、店舗や事務所、倉庫などの非住宅建築は、慣習的に鉄骨造(S造)や鉄筋コンクリート造(RC造)で建てられることが一般的でした。
「木造は火事に弱い」「強度が不安」といった古い固定観念や、法規制の壁があったためです。
しかし、近年の技術革新と法改正により、その壁は取り払われました。
低層・中層の非住宅建築において、木造は十分に選択肢となり得る時代になっています。
それにもかかわらず、木造非住宅の供給体制はまだ十分に整っていません。
大手ゼネコンが手掛けるような大規模木造ではなく、地域の工務店が手掛けられる500㎡〜3000㎡未満の中規模木造建築において、プレイヤーは圧倒的に不足しています。
つまり、競合が少ない「ブルーオーシャン」なのです。
特に、地域密着型の店舗やクリニック、福祉施設などは、地場の工務店こそが担い手として相応しい領域であり、ここに参入することで新たな顧客層を開拓できます。
脱炭素社会が後押しする「木造化」への不可逆な流れ
木造非住宅への参入を推奨する最大の理由は、世界的な「脱炭素(カーボンニュートラル)」への動きです。
気候変動対策として、建築分野におけるCO2排出量の削減は急務となっており、製造時や建設時のCO2排出量が少なく、かつ炭素を固定し続ける「木材」への注目度はかつてないほど高まっています。
「建築物木材利用促進法」の改正により、公共建築物だけでなく民間建築物にも木材利用が強く推奨されるようになりました。
これは国を挙げての施策であり、補助金制度の拡充や建築基準法の合理化など、木造建築を建てるためのハードルが劇的に下がっています。
また、企業にとっても、自社ビルや店舗を木造にすることはESG経営やSDGsへの取り組みとして高く評価されます。この「環境価値」は、鉄やコンクリートにはない木造だけの強力な武器であり、今後ますます重要視されるでしょう。
鉄骨・RC造に対する木造の圧倒的な「コストと工期の優位性」

「木造は環境に良い」というだけでは、ビジネスとしての参入理由は不十分かもしれません。
しかし、現在の市場環境において、木造はS造やRC造と比較して、実利的なメリットも非常に大きくなっています。
特に、資材価格の変動が激しい昨今において、コストコントロールのしやすさと工期の短さは、工務店にとっても施主にとっても強力な武器となります。
非住宅=鉄骨という常識を疑い、木造を提案することで、予算オーバーで頓挫しかけていたプロジェクトを救うことも可能になるのです。
ここでは、ビジネス視点での具体的なメリットを解説します。
資材高騰時代における木造のコストパフォーマンス
近年、世界情勢の影響により鉄鋼材やコンクリートの価格高騰が建設コストを大きく押し上げています。
木材価格も変動はありますが、一般的に同規模の建物を建てた場合、S造やRC造に比べて木造の方が坪単価を抑えられる傾向にあります。
特に、基礎工事にかかるコストの差は歴然です。木造建築物はS造やRC造に比べて重量が軽いため、地盤改良費や基礎のコンクリート・鉄筋量を大幅に縮小できます。
上部構造だけでなく、建物全体でのトータルコストダウンを実現できるのが木造の強みです。
予算が厳しい案件こそ、VE(バリューエンジニアリング)提案として木造化を検討する価値があります。
施主に対して「木造に変更することで、予算内でご希望の広さを実現できます」という提案ができれば、受注確率は格段に上がります。
工期短縮がもたらす利益率向上と現場負担の軽減
木造建築は、プレカット工場で加工された部材を現場で組み立てるため、現場での作業工程が少なく、S造やRC造と比較して工期を大幅に短縮できます。
RC造のようにコンクリートの養生期間を長く待つ必要もありません。
工期が短いということは、それだけ現場管理費(仮設費、人件費、光熱費など)を圧縮できることを意味し、工務店の利益率向上に直結します。
また、施主にとっても、店舗や施設の開業時期を早められることは大きなメリットです。
早期に収益化を開始できるため、事業計画上の優位性をアピールできます。
さらに、職人不足が叫ばれる中、効率的に現場を回転させられる木造非住宅は、現場監督や職人の負担軽減にも繋がり、働き方改革の観点からも推奨されます。
地域材活用によるブランディングと企業イメージの向上
地域材(県産材など)を活用することは、単なる材料調達の話に留まらず、その地域の物語を建物に吹き込むブランディング活動となります。
「地元の山で育った木で建てられたオフィス」。
「県産材をふんだんに使った温かみのある保育園」。
こうしたストーリーは、建物の利用者や地域住民に愛着を感じさせます。
無機質な鉄やコンクリートの箱ではなく、木の香りや手触りを感じられる空間は、他にはない独自の価値を持ちます。
特に、地域貢献を大切にしたい施主にとって、地産地消の提案は心に響きます。
工務店としても、「地元の木を使う会社」としての認知が広がれば、企業イメージは向上し、採用活動などにも好影響を与えます。
また、自治体が発注する案件や補助金申請においても、地域材の利用が有利に働くケースが多く、ビジネスチャンスを広げる鍵となります。
「知識・経験のギャップ」を埋めて成功へ導くパートナーシップ

ここまで木造非住宅の魅力を語ってきましたが、実際に参入しようとすると、多くの工務店様が「壁」にぶつかります。
「住宅の知識だけでは法規がクリアできない」
「構造計算が複雑でわからない」
「適切な木材調達ルートがない」。
この「知識・経験のギャップ」こそが、市場参入を阻む最大の障壁です。
しかし、諦める必要はありません。
自社だけですべてを解決しようとせず、専門的な知見を持つパートナーと組むことで、その壁は驚くほど簡単に乗り越えられます。
ハウス・ベースは、まさにそのために存在します。
多くの実務者が抱える「木造のプロではない」という不安
「建築のプロではあるが、非住宅木造のプロではない」。
このジレンマは、多くの実務者が抱えています。
住宅とは異なる建築基準法、防耐火規定、構造計算のルール…。
未知の領域への挑戦には、リスクや不安がつきものです。
「もし設計ミスがあったらどうしよう」「見積もりが甘くて赤字になったら…」。
そうした不安から、せっかくの引き合いを断ってしまうケースも少なくありません。
しかし、それは非常にもったいないことです。
必要なのは、ゼロから勉強して自社のスタッフだけで対応することではなく、足りないピースを埋めてくれる専門家のサポートを得ることです。
餅は餅屋、木造非住宅には木造非住宅の専門家の知恵を借りるのが、最短かつ最もリスクの少ない成功ルートです。
法規・構造・防耐火…専門的なハードルをどう越えるか
非住宅木造において特に難解なのが、防耐火設計と構造計算です。
建物の用途や規模、建設地によって要求される性能が複雑に変化します。
これらをクリアしつつ、意匠性(デザイン)とコストのバランスを取るには、高度な専門知識と経験が必要です。
例えば、燃え代設計や耐火建築物の仕様選定など、住宅では馴染みの薄い検討事項が山積みです。
しかし、これらを社内で内製化するには膨大な時間と教育コストがかかります。
そこで有効なのが、外部の専門家とチームを組むことです。
構造設計に強い設計事務所や、木造コーディネートができるコンサルタントと連携することで、法的な要件を満たしながら、意匠的にも優れた木造建築を実現できます。
外部リソースを上手く活用することが、非住宅ビジネス成功の鍵です。
ハウス・ベース「モクプロ」が提供する解決策と実務支援
私たちハウス・ベースが運営する「モクプロ」は、木造非住宅に挑戦する建築実務者のためのプラットフォームです。
1. ナレッジ(KNOWLEDGE): 非住宅木造に必要な専門知識を体系的に提供し、皆様の「わからない」を解消します。
2. プロジェクト(PROJECT): 先進的な事例を深掘りし、成功のヒントを具体的に提示します。
3. コミュニティ(COMMUNITY): 専門家や同じ志を持つ実務者と繋がり、課題を共有・解決できる場を作ります。
さらに、ハウス・ベースでは実務的な「木造化・木質化支援」も行っています。
基本計画の段階から、プロジェクトのあらゆるフェーズで皆様をサポートします。
「木造非住宅をやりたいが、何から始めればいいかわからない」。
そんな時は、まず私たちにご相談ください。
皆様の「パートナー」として、挑戦を成功へと導きます。
まとめ
これからの社会において、「木造非住宅」は単なる建築の選択肢の一つではなく、工務店の企業経営を支える重要な柱となります。
脱炭素という時代の要請、法改正による後押し、そして何より、コストメリットや他社との差別化といった実利的な要素が、木造化への参入を強く推奨しています。
縮小する住宅市場に留まるのではなく、広大なブルーオーシャンへと漕ぎ出すタイミングは、まさに「今」です。
もちろん、住宅とは異なるルールや技術的なハードルは存在します。
しかし、その「知識・経験のギャップ」を一人で抱え込み、参入を諦める必要はありません。
「モクプロ」は、真剣に木造化・木質化に取り組む建築実務者の皆様に寄り添い、必要な情報とネットワークを提供するプラットフォームです。
そして、私たちハウス・ベースは、複雑でリスクのある実務課題を共に解決し、黒子として支えるパートナーです。
「建築のプロ」である皆様の施工力・技術力と、私たちの「木造非住宅の専門知識」を掛け合わせれば、恐れるものは何もありません。
地域に愛され、未来に残る「木の建築」を、私たちと一緒に造りませんか?
まずは、「モクプロ」で最新のナレッジに触れ、ハウス・ベースへお気軽にご相談ください。
ハウス・ベース株式会社の木造化・木質化支援
非住宅用途の建築物で、木造化・木質化の更なる普及が期待されています。
諸問題を解決して、木造化・木質化を実現するには、「木が得意な実務者メンバー」による仕事が必要不可欠です。
木造非住宅ソリューションズでは、発注者の課題に対して、最適な支援をご提案します。
ハウス・ベース株式会社は、建築分野の木造化・木質化を支援するサービスである「木造非住宅ソリューションズ」を展開しています。
「木造非住宅ソリューションズ」とは、脱炭素社会実現に向けて、建築物の木造化・木質化に関する課題解決に貢献するための業務支援チームです。
◾️テーマ:「(木造化+木質化)✖️α」→木造化・木質化を追求し、更なる付加価値を創出
◾️活動の主旨:木に不慣れな人・会社を、木が得意な人・会社が支援する仕組みの構築
【主なサービス内容】
◾️広報支援:コンテンツマーケティング、WEBサイト制作、コンテンツ制作等

◾️設計支援 :設計者紹介、計画・設計サポート、設計・申請補助等

◾️実務支援 :木構造支援、施工者紹介、講師等

木造化・木質化で専門家の知見が必要な場合は、ぜひハウス・ベース株式会社までお気軽にお問合せください。









