【店舗】中大規模木造の店舗計画|設計で押さえるべき注意点

【店舗】中大規模木造の店舗計画|設計で押さえるべき注意点

近年、商業施設や飲食店、物販店など、中大規模の非住宅分野で木造化・木質化の動きが急速に加速しています。

これまでは鉄骨造(S造)や鉄筋コンクリート造(RC造)が主流だった店舗建築において、なぜ今、「木造」が注目されているのでしょうか。

脱炭素社会の実現に向けた環境意識の高まり、持続可能性(サステナビリティ)への配慮はもちろんですが、それ以上に、木材が持つ温かみやデザイン性が、店舗の「集客力」や「ブランドイメージ向上」に直結すると認識され始めたことが大きな要因です。

しかし、中大規模の木造店舗の設計・施工は、住宅とは異なる特有の難しさがあります。

特に「計画段階」での検討不足は、後の設計変更やコストアップ、さらには事業全体の成否に直結する重大なリスクとなります。

「法規(特に防火)のハードルが高そうだ」

「コストが読めない」

「木造で本当に十分な強度や機能性を確保できるのか」

こうした不安を抱える設計事務所、工務店、建設会社、そして建材・木材メーカーの皆様も多いのではないでしょうか。

この記事では、中大規模木造の店舗を計画する上で、実務者が「絶対に押さえておくべき注意点」を、計画初期から設計、施工、デザインに至るまで体系的に解説します。


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なぜ今、中大規模の店舗に「木造」が選ばれるのか?

なぜ今、中大規模の店舗に「木造」が選ばれるのか?

中大規模の店舗建築において、「木造」という選択肢が現実味を帯び、むしろ積極的に選ばれるようになってきました。

これは単なる流行ではなく、社会的な要請と、木造建築が持つ本質的な価値が見直された結果と言えます。

環境負荷の低減というマクロな視点に加え、店舗という「商業空間」にとって、木造化がもたらす具体的なメリットが非常に大きいことが理由です。

特に、他店との差別化や、顧客体験の質(UX)の向上が求められる現代において、木材の活用は強力な武器となります。

建築実務者として、この流れを「コストや法規の障壁」と捉えるか、「新しいビジネスチャンス」と捉えるかで、未来は大きく変わるでしょう。

ここではまず、施主や事業者に木造化を提案する上で知っておきたい、その背景と魅力を整理します。

店舗における木造化のメリットと集客効果

店舗を木造化する最大のメリットの一つは、その「集客効果」です。

木材がふんだんに使われた空間は、訪れる人々に無意識のうちに「温かみ」「安らぎ」「心地よさ」といったポジティブな印象を与えます。

これは、鉄やコンクリートといった無機質な素材では得難い、木材特有の力です。

例えば、カフェやレストランであれば、木の空間が提供するリラックス効果によって顧客の滞在時間が延び、客単価の向上につながる可能性があります。

物販店であれば、木の内装が商品の魅力を引き立て、ブランドイメージを高める効果が期待できます。

また、木造建築は「五感に訴える」空間を作ります。

木の香り(フィトンチッド)によるリラクゼーション効果、木肌の柔らかな触感、そして視覚的な優しさは、顧客にとって忘れられない「体験」となります。

この「体験価値」こそが、リピーターを増やし、口コミを生む原動力となるのです。

建築実務者としては、この「木がもたらす付加価値」を施主に具体的に提示することが重要です。

法改正が後押しする中大規模木造の可能性

かつて、日本の都市部における中大規模建築で木造が少なかった大きな理由の一つに、「法律(建築基準法)」の壁、特に防火規制がありました。

しかし、近年この状況は大きく変わっています。

2000年代以降、建築基準法は段階的に改正され、防火に関する技術開発も進みました。

その結果、耐火性能を持つ木質部材(耐火集成材など)の使用や、「燃えしろ設計」といった工法の活用により、一定の条件下であれば都市部の防火地域内でも、中大規模の木造建築物が建てられるようになりました。

特に、店舗のような多くの人が集まる建物(特殊建築物)であっても、適切な防火設計と避難計画を行えば、木造での実現が可能になっています。

この法的な環境整備は、設計者や施工者にとって、これまで諦めていた「木造で建てる」という選択肢を現実的なものにしました。

この変化を正しく理解し、最新の法規に基づいた提案ができるかどうかが、実務者の腕の見せ所と言えるでしょう。

施主・利用者に響く「木の空間」の魅力

施主(事業者)が木造店舗を選ぶ理由は、単なる集客効果だけではありません。

企業としての姿勢を社会に示す「メッセージ」としての側面も強まっています。

現代の消費者は、環境に配慮しているか、持続可能な社会に貢献しているか(SDGsやESG投資など)といった視点で、企業や店舗を評価するようになっています。

その点、木材は「植林・伐採・利用」というサイクルを通じてCO2を固定化する、再生可能な「カーボンニュートラル」素材です。

木造店舗を選ぶこと自体が、「環境に配慮した企業である」という強力なブランディング(広報活動)になるのです。

また、働く従業員にとっても、木の空間はストレスを軽減し、生産性を高める効果があるという研究結果もあります。

利用客だけでなく、施主、そしてそこで働くスタッフにとっても、木造は大きな魅力を提供します。

設計者や工務店は、こうした多角的なメリットを理解し、施主の経営課題に寄り添った提案をすることが求められます。


【計画初期】木造店舗の成否を分ける重要ポイント

【計画初期】木造店舗の成否を分ける重要ポイント

中大規模木造の店舗プロジェクトにおいて、最も重要と言っても過言ではないのが「計画初期」の段階です。

ここで事業の骨格をしっかりと固め、木造化の目的を明確にしておかなければ、後の設計・施工段階で必ずと言っていいほど問題が発生します。

「木造でやりたい」という漠然としたイメージだけで進めてしまうと、法規の壁にぶつかって計画が頓挫したり、想定外のコストアップで事業採算性が悪化したりするリスクがあります。

S造やRC造の計画とは異なる、木造特有の考慮すべき点があります。

事業計画の精度、敷地条件の読み取り、そして何より「なぜ木造なのか」という芯の通ったコンセプト。

これらを初期段階で徹底的に詰めることが、プロジェクト成功への最短距離です。

ここでは、実務者が最初に取り組むべき3つの重要なポイントを解説します。

事業計画と予算:初期コストとランニングコストの試算

木造店舗の計画で最初につまずきやすいのが「コスト」の問題です。

「木造は安い」というイメージは、あくまで小規模な住宅の場合であり、中大規模の非住宅、特に耐火性能などが求められる店舗建築においては、S造やRC造と比較して一概に安いとは言えません。

計画初期段階では、まず精度の高い事業計画と予算の策定が不可欠です。

初期建設費(イニシャルコスト)だけでなく、将来のメンテナンス費用や、木造化による光熱費の削減効果なども含めた「ランニングコスト」を試算し、トータルでの採算性を検討する必要があります。

例えば、耐火性能を持つ集成材の使用や、特殊な工法を採用する場合、初期コストはS造より高くなるケースもあります。

しかし、木材の断熱性の高さによる冷暖房効率の向上や、部材が軽量であることによる基礎工事費の削減といったメリットもあります。

これらの要素を総合的に比較検討し、施主に対して「なぜこのコストがかかるのか」「長期的にどのようなメリットがあるのか」を明確に説明できる資料を準備することが、実務者に求められる重要な役割です。

立地と敷地条件:木造化に適した土地の見極め方

店舗の計画において立地が重要なのは言うまでもありませんが、中大規模木造においては、その「敷地条件」が計画の自由度を大きく左右します。

特に注意すべきは「防火地域」や「準防火地域」の指定です。

都市部の主要な商業地は、そのほとんどが防火地域に指定されています。

防火地域内で木造(特に柱や梁を「現し」にする)建築物を建てる場合、非常に高い耐火性能が要求され、使える技術や部材が限定されたり、コストが大幅に上昇したりする可能性があります。

また、敷地への「搬入路」も重要なチェックポイントです。

中大規模木造では、大型の集成材やパネル(CLTなど)を工場で製作し、現場で組み上げる工法が主流です。

そのため、大型トラックが現場までスムーズにアクセスでき、クレーンによる作業スペースが確保できるかどうかは、工期とコストに直結します。

計画初期の段階で、敷地調査と合わせて、法規制と搬入条件を徹底的に洗い出し、木造化の可否や最適な工法を判断する必要があります。

コンセプトの明確化:木造で何を実現したいのか

「なぜ、この店舗を木造で建てるのか?」

この問いに対する明確な答え(コンセプト)を、施主と建築実務者が共有することが、プロジェクトの成功に不可欠です。

単に「木造が流行っているから」「環境に良さそうだから」といった曖昧な理由で進めると、設計の途中でコストや法規の壁にぶつかった際に、判断基準がブレてしまいます。

「木造を選ぶ」ということは、S造やRC造では得られない「何か」を求めているはずです。

それは、地域の木材を使うことによる「地域貢献」かもしれませんし、木の温もりによる「究極のリラックス空間の提供」かもしれません。

あるいは、革新的な木造建築物として「企業の先進性をアピールする」ことかもしれません。

この「木造で実現したい核となる価値」を明確にすることで、初めて設計の方向性が定まります。

例えば、木の質感を見せる「現し」にこだわるのか、それともコストを優先して構造体は石膏ボードで覆う(耐火被覆する)のか。

コンセプトが明確であれば、こうした重要な判断を迷いなく行うことができます。


【設計実務】中大規模木造で必須の法規・防火対策

【設計実務】中大規模木造で必須の法規・防火対策

中大規模木造の店舗設計において、実務者が最も神経を使うのが「法規」のクリア、特に「防火対策」です。

店舗は不特定多数の人が利用する「特殊建築物」に該当する場合が多く、住宅に比べてはるかに厳しい安全基準が求められます。

建築基準法では、万が一火災が発生した場合でも、建物が倒壊せず、利用者が安全に避難できる時間を確保するための様々な規定が設けられています。

この法規のハードルを「制約」と捉えるか、「安全性を確保するための技術的な挑戦」と捉えるかで、設計の質は大きく変わります。

最新の法知識と、それを実現するための工法(燃えしろ設計や耐火被覆など)を正しく理解し、安全かつ魅力的な木造空間をいかに両立させるか。

設計実務者の知見が試される部分です。

用途と規模で変わる「耐火建築物」の要求

中大規模木造の設計で最初に行うべきことは、計画する店舗の「用途」「規模(面積や階数)」「立地(防火地域か否か)」に基づき、建築基準法上どのような性能(例:耐火建築物、準耐火建築物など)が求められるかを正確に把握することです。

例えば、防火地域内にある3階建て以上、または延べ面積が100㎡を超える建物は、原則として「耐火建築物」としなければなりません。

また、店舗のような特殊建築物は、規模が大きくなるほど、より高い防火性能が求められます。

近年、技術の進歩により「木造の耐火建築物」も可能になりましたが、それには「耐火集成材」の使用や、柱や梁を石膏ボードなどで厳重に被覆する方法など、特別な仕様が必要となります。

設計の初期段階で、「この計画ではどのレベルの防火性能が必要か」を特定し、それが木造で実現可能か、またその場合のコストや工法を検討することが、手戻りを防ぐために極めて重要です。

知っておきたい「燃えしろ設計」と「防火区画」

木造でありながら防火性能を確保するための代表的な技術が「燃えしろ設計」です。

これは、火災時に木材の表面が燃えて炭化層を形成し、その炭化層が内部の燃焼を遅らせるという性質を利用した設計手法です。

あらかじめ燃える部分(燃えしろ)を計算に入れて部材の断面を通常より大きく設計することで、一定時間、構造体としての強度を維持させることができます。

この「燃えしろ設計」を用いることで、木材の質感をそのまま見せる「現し」のデザインと、準耐火性能などを両立させることが可能になる場合があります。(ただし、適用には厳密な計算と条件があります)

また、店舗建築では「防火区画」も重要です。

火災が発生した際に、火や煙が建物全体に広がるのを防ぐため、床や壁で区切る必要があります。

木造の場合、この防火区画をどう構成するかが設計のポイントとなります。

S造やRC造とは異なる木造特有の納まりや、配管・配線が区画を貫通する部分の処理など、細部にわたる防火設計の知識が求められます。

内装制限と避難計画:安全な店舗空間の作り方

店舗建築では、構造体の防火性能だけでなく、「内装制限」にも注意が必要です。

多くの人が集まる空間では、火災時に燃えやすい内装材が使われていると、火の回りが早くなり、有毒なガスが発生して避難が遅れる危険があります。

そのため、建築基準法では、店舗の用途や規模に応じて、壁や天井に使用できる内装材を「難燃」「準不燃」「不燃」材料に制限しています。

木材を内装に「現し」で使いたい場合、この内装制限の対象となるかどうか、また、使用できる面積に制限がないかを必ず確認しなければなりません。

所定の処理を施した難燃木材などを使用する選択肢もあります。

さらに、最も重要なのが「避難計画」です。

火災時に利用客と従業員が迅速かつ安全に避難できるよう、通路の幅や、避難経路(廊下、階段)、非常口の配置を明確に定める必要があります。

木造であるか否かに関わらず、店舗設計の基本ですが、木造の特性(例えば、煙の広がり方など)も考慮した、より安全マージンの高い計画が求められます。


【コストと施工】木造店舗の費用と工期を最適化する

【コストと施工】木造店舗の費用と工期を最適化する

中大規模木造の店舗計画において、施主が最も気にする点の一つが「コスト」と「工期」です。

設計実務者としては、「木造は高い」「木造は時間がかかる」といった施主の漠然とした不安を解消し、適切なコストで高品質な建物を、いかに合理的な工期で実現するかを提案する必要があります。

確かに、特殊な耐火部材や大スパンを実現するための集成材は高価になる場合があります。

しかし、木造建築は「建て方」を工夫することで、S造やRC造にはないコストメリットや工期短縮の可能性を秘めています。

重要なのは、初期の建設費(イニシャルコスト)だけでなく、資材調達から施工、さらには将来のメンテナンスまでをトータルで考え、プロジェクト全体を最適化する視点です。

ここでは、木造のコストと施工に関する誤解を解き、最適化のためのポイントを解説します。

木造のコストは本当に高い?坪単価の誤解

「木造はS造(鉄骨造)より坪単価が高い」と言われることがありますが、これは単純な比較では判断できません。

コストは、建物の規模、求められる防火性能、使用する木材の種類、そして工法によって大きく変動します。

例えば、小規模な店舗であれば、S造よりも木造の方が基礎工事を簡略化できるため、トータルコストが安くなるケースは多いです。

一方、都市部の防火地域で大スパンの空間を木造(耐火建築物)で実現しようとすれば、S造よりもコストがかかる可能性は十分にあります。

実務者としては、「坪単価いくら」という単純な議論ではなく、施主が木造に求める価値(デザイン性、環境性能など)を実現するために、どの部分にコストをかけるべきかを明確にすることが重要です。

また、木造の軽量性による「地盤改良費の削減」や、断熱性の高さによる「将来の光熱費の削減」といった、S造やRC造にはない隠れたコストメリットも合わせて提示し、総合的な判断を促す必要があります。

工期短縮を実現する「部材のプレカット」と「乾式工法」

中大規模木造の大きなメリットの一つが「工期の短縮」です。

特に「プレカット」技術の活用は、現場の作業効率を劇的に向上させます。

プレカットとは、柱や梁、接合部などを、あらかじめ工場で機械加工しておく技術です。

これにより、現場での煩雑な加工や調整作業が大幅に削減され、S造の鉄骨工事やRC造のコンクリート打設・養生期間に比べ、短期間で建て方(骨組みの組み立て)が完了します。

また、木造建築は基本的に「乾式工法」です。

RC造のようにコンクリートやモルタルが固まるのを待つ時間(養生期間)が不要なため、天候に左右されにくく、建て方後の内外装工事もスムーズに進められます。

店舗ビジネスにおいて、オープン日が遅れることは大きな損失につながります。

この「工期短縮」は、施主にとって金銭的なメリット(早期の営業開始)に直結する、非常に強力な提案材料となります。

地域材の活用とサプライチェーンの構築

木造建築のコストと品質を安定させる上で、見落とされがちなのが「木材の調達(サプライチェーン)」です。

特に、中大規模木造では大量の、あるいは特殊な寸法の木材が必要となるため、計画初期から木材の調達ルートを確保しておくことが極めて重要です。

もし計画が具体的になってから木材を探し始めると、希望の品質や寸法のものが手に入らなかったり、価格が高騰したりするリスクがあります。

特に、その地域の木材(地域材)を活用しようとする場合は、その地域に安定供給できる製材所や木材供給会社があるか、設計で求める強度や乾燥度(含水率)に対応できるかを、早期に確認する必要があります。

設計事務所や工務店にとっては、信頼できる木材メーカーやプレカット工場との強固なネットワークを構築しておくことが、そのまま競争力となります。

地域材をうまく活用できれば、輸送コストの削減や、補助金の対象となる可能性もあり、施主への大きなアピールポイントにもなります。


【意匠と機能】魅力を高める木造店舗デザインの工夫

【意匠と機能】魅力を高める木造店舗デザインの工夫

中大規模木造で店舗を設計する醍醐味は、S造やRC造では表現しにくい、木材の温かみや力強さを活かした「意匠(デザイン)」を実現できる点にあります。

木材を構造体として、あるいは内装材としてどのように見せるかで、店舗の印象は大きく変わります。

しかし、店舗建築である以上、デザイン性だけでなく、「機能性」も同時に満たさなければなりません。

特に、多くの人が集まる店舗では、「音」の問題(防音・遮音)や、長期間にわたる「メンテナンス性」「耐久性」への配慮が不可欠です。

デザインの魅力と実用的な機能をいかに両立させるか。

木造の特性を深く理解し、そのポテンシャルを最大限に引き出す設計の工夫が求められます。

ここでは、木造店舗の魅力を高めるための具体的なポイントを解説します。

木材の「現し」で見せるデザインのポイント

木造店舗の最大の魅力は、柱や梁といった構造体をそのまま見せる「現し(あらわし)」のデザインです。

木材の力強い架構(フレーム)や、美しい木目は、空間にダイナミックさと同時に安らぎを与え、店舗の「顔」となります。

しかし、ただ木を見せれば良いというものではありません。

設計実務者としては、いくつかの点に注意が必要です。

第一に、前述した「法規(防火・内装制限)」との兼ね合いです。

防火地域や内装制限のかかる場所で「現し」を実現するには、燃えしろ設計を採用したり、部材を不燃処理したりするなど、コストと法規の両面からの検討が必要です。

第二に、「木の組み方」です。

接合部に金物を使うか、伝統的な継手・仕口(あるいはそれを模した金物)を使うかによって、空間の印象は大きく変わります。

金物を隠して木だけで組まれているように見せるか、あえて金物をデザインの一部として見せるか。

店舗のコンセプトに合わせた緻密なディテール設計が、空間の質を決定づけます。

店舗に求められる「防音性」と「遮音性」の確保

木造建築でしばしば懸念されるのが「音」の問題です。

木材はS造やRC造に比べて軽量であるため、音が伝わりやすい(特に床の衝撃音など)という特性があります。

飲食店であれば、客同士の会話やBGMが隣の席や外部に漏れすぎないように、あるいは厨房の音が客席に響かないようにする「遮音」性能が求められます。

物販店やクリニックであれば、静かで落ち着いた空間を保つための「防音」対策が必要です。

具体的な対策としては、床の構造を二重にする(二重床)、壁や天井の内部に吸音材(グラスウールなど)を充填する、遮音性能の高い石膏ボードを二重に貼る、といった方法があります。

重要なのは、計画段階でその店舗にどの程度の防音・遮音性能が必要かを施主と共有し、S造やRC造で設計する時以上に、音の伝わり方を意識した断面計画や仕様選定を行うことです。

メンテナンス性と耐久性:長く愛される店舗の秘訣

店舗は、住宅以上に多くの人が出入りし、使用頻度が高いため、「メンテナンス性」と「耐久性」が非常に重要です。

木材は「生きている」素材であり、湿気や乾燥による伸縮、日焼けによる変色などが起こり得ます。

特に、店舗の出入り口付近や水回り(厨房、トイレ)など、雨や水に濡れやすい場所での木材の使用には注意が必要です。

木材の腐食を防ぐための適切な「防腐・防蟻処理」や、水に強い樹種(ヒバやヒノキなど)の選定、あるいは木材の表面を保護するための塗装(浸透性塗料やコーティング剤)が不可欠です。

また、床材についても、不特定多数の客が土足で歩くことを想定し、傷や汚れに強い硬い木材(広葉樹など)を選んだり、定期的なワックスがけが容易な仕上げにしたりする配慮が求められます。

初期のデザインの美しさだけでなく、5年後、10年後もその美しさを保てるような「メンテナンス計画」まで含めて提案することが、長く愛される店舗づくりの秘訣です。


まとめ:木造店舗の成功は「計画初期のナレッジ」で決まる

まとめ:木造店舗の成功は「計画初期のナレッジ」で決まる

今回は、中大規模木造の店舗を計画する上で、建築実務者の皆様が押さえておくべき「注意点」について、計画初期から設計、施工、デザインに至るまでを体系的に解説しました。

かつては法規やコストの面でハードルが高いとされてきた中大規模木造ですが、技術の進歩と法改正により、その可能性は大きく広がっています。

S造やRC造にはない、木材ならではの空間の魅力、環境性能、そして工期短縮の可能性は、これからの店舗建築において大きな強みとなります。

しかし、そのポテンシャルを引き出すためには、住宅設計の延長線上ではない、中大規模木造特有の「ナレッジ」が必要です。

  1. 計画初期: 「なぜ木造なのか」というコンセプトを明確にし、事業計画に落とし込む。
  2. 法規・防火: 敷地と規模に応じた法要求(特に耐火性能)を正確に把握し、実現可能な工法を選定する。
  3. コスト・施工: プレカットや乾式工法による工期短縮メリットを活かし、信頼できるサプライチェーンを確保する。
  4. 意匠・機能: 「現し」のデザインの魅力と、店舗に必須の「防音」「メンテナンス性」を両立させる。

これらのポイントを計画の初期段階から丁寧に検討し、施主と共有することが、プロジェクトを成功に導く鍵となります。

この記事が、皆様の中大規模木造店舗プロジェクトの第一歩を、力強く後押しするものとなれば幸いです。

ハウス・ベース株式会社の木造化・木質化支援

非住宅用途の建築物で、木造化・木質化の更なる普及が期待されています。

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◾️活動の主旨:木に不慣れな人・会社を、木が得意な人・会社が支援する仕組みの構築

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著者

一級建築士。群馬県出身。芝浦工業大学卒業後、設計事務所・工務店・木構造材メーカー勤務を経て、2015年にハウス・ベース株式会社を起業。事業内容:住宅・建築関連の業務支援。特に非住宅用途の木造化・木質化支援(広報支援・設計支援・実務支援)に注力。木造非住宅オウンドメディア「モクプロ」を運営。

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