【建材・木材メーカー】木造非住宅市場での認知度UP戦略

【建材・木材メーカー】木造非住宅市場での認知度UP戦略

今、公共建築物や商業施設、オフィスビルなどで「木造化・木質化」の動きが急速に加速しています。

脱炭素社会への貢献や、働く環境の快適性向上といった観点から、木造非住宅市場はこれまでにない大きな可能性を秘めています。

この大きな流れの中で、優れた技術や魅力的な製品を持つ建材・木材メーカーの皆様にとって、今は絶好のチャンスです。

しかし、同時にこんな悩みをお持ちではないでしょうか?

「自社には良い木材や建材があるのに、なかなか設計事務所やゼネコンに知ってもらえない」

「木造非住宅の分野で、どうやって自社の強みをアピールすればいいか分からない」

「従来の展示会やカタログ送付だけでは、手応えを感じられなくなってきた」

木造非住宅市場は、住宅市場とは異なるプレイヤー(組織設計事務所、ゼネコン、専門工事業者など)が存在し、求められる情報も異なります。

単に「良い製品です」とアピールするだけでは、数ある選択肢の中に埋もれてしまいがちです。

この記事では、木造非住宅という専門性の高い市場において、建材・木材メーカーが自社の「認知度」を飛躍的に高め、「選ばれる存在」になるための具体的な広報・マーケティング戦略について、わかりやすく解説します。

単なる製品紹介ではなく、「価値」を伝え、建築実務者の「パートナー」として認知されるためのヒントがここにあります。


INDEX

なぜ今、木造非住宅市場で「認知度」が重要なのか?

なぜ今、木造非住宅市場で「認知度」が重要なのか?

木造非住宅市場が拡大する今、多くの企業が新たなビジネスチャンスを求めて参入しています。

この競争が始まりつつある市場において、なぜ「認知度」がこれほどまでに重要なのでしょうか。

それは、木造非住宅のプロジェクトが、従来の鉄骨造やRC造とは異なる特有の課題やプロセスを持つからです。

設計者や施工者は、新しい工法や材料に対して「本当にこの建材で大丈夫か?」「実績はあるのか?」といった不安を抱えています。

この不安が解消されない限り、どんなに優れた製品であっても採用には至りません。

認知度とは、単なる知名度ではなく、「あのメーカーなら信頼できる」という安心感の証です。

この章では、市場の現状と、設計者・施工者のリアルな悩みを踏まえ、認知度向上がなぜ不可欠なのかを深掘りします。

拡大する木造非住宅市場と新たな商機

「公共建築物等木材利用促進法」が施行されて以来、国を挙げた木材利用の推進が進んでいます。

当初は学校や庁舎などの公共建築が中心でしたが、近年ではその流れが民間にも波及し、オフィス、商業施設、倉庫など、様々な非住宅分野で木造化・木質化の事例が増加しています。

この背景には、SDGsや脱炭素への社会的な関心の高まりがあります。

木材はCO2を固定化する「炭素の貯蔵庫」であり、環境負荷の低い建材として再評価されています。

また、木質空間がもたらす快適性やストレス軽減効果が科学的にも証明され、働く人々のウェルビーイング(心身の健康)を向上させる観点からも注目を集めているのです。

建材・木材メーカーの皆様にとって、これは何を意味するでしょうか。

それは、これまで住宅市場がメインだった企業にとっても、自社の技術や製品を「非住宅」という新しいフィールドで活かす大きなチャンスが到来しているということです。

しかし、チャンスがあるということは、同時にライバルも増えるということ。

この新しい市場で確固たる地位を築くためには、いち早く市場のニーズを掴み、自社の存在価値を明確に示す「認知度」の獲得が不可欠なのです。

設計者や施工者が抱える「建材選定の悩み」

木造非住宅のプロジェクトは、設計者や施工者にとって「挑戦」であることが少なくありません。

特に中大規模の木造建築は、法規制(耐火、構造など)のハードルが高く、使用できる建材も限られてきます。

彼らが建材を選定する際、どのような点に悩んでいるのでしょうか。

最も大きな悩みは、「信頼できる情報が不足している」ことです。

例えば、

「この木質耐火部材は、本当に法規をクリアできるのか?」

「特殊な接合部金物を使いたいが、施工実績や技術的な裏付けは十分か?」

「これまで使ったことのない内装材だが、メンテナンス性や耐久性はどうか?」

といった疑問です。

彼らは単なる製品カタログのスペック(仕様)を見たいのではありません。

その建材を使った場合の「具体的な納まり」や「施工上の注意点」、「コスト感」、そして何よりも「信頼できる実績(プロジェクト事例)」を求めています。

メーカー側が「良い製品です」と言うだけでは不十分で、設計者や施工者が抱えるこれらの具体的な「不安」や「悩み」に寄り添い、解決策を提示できる情報こそが求められています。

この「悩み」に応える情報発信こそが、信頼と認知度を獲得する第一歩となります。

建材・木材の「指名買い」を生むブランディングの第一歩

「指名買い」とは、設計者や発注者が「このプロジェクトには、A社のあの製品を使いたい」と、特定のメーカーの製品を名指しで採用することです。

木造非住宅市場において、この「指名買い」を獲得することは、メーカーにとって非常に大きな強みとなります。

なぜなら、価格競争に陥りにくく、安定した受注につながるからです。

では、どうすれば「指名買い」を生み出せるのでしょうか。

その鍵が「ブランディング」です。

ブランディングと聞くと、高額な広告を打つことや、おしゃれなロゴを作ることだと誤解されがちですが、本質は異なります。

木造非住宅市場におけるブランディングとは、「〇〇(特定の分野や課題)といえば、あのメーカーだ」という専門家としてのポジションを確立することです。

例えば、

「木造の大空間なら、B社の構造躯体が信頼できる」

「難しい耐火要件なら、C社に相談すれば何とかなる」

といった具合です。

このような認識を持ってもらうためには、自社の製品が「何を解決できるのか」という価値を明確にし、それを一貫して発信し続ける必要があります。

単なる「モノ売り」ではなく、設計者や施工者の課題解決を支援する「パートナー」としての認知度を高めること。

それこそが、ブランディングの第一歩なのです。

建材・木材メーカーが陥りがちな広報の「落とし穴」

建材・木材メーカーが陥りがちな広報の「落とし穴」

木造非住宅市場で認知度を高めようと努力しているにもかかわらず、なかなか成果が出ないメーカーには、いくつかの共通点があります。

良かれと思って行っている広報活動が、実はターゲットである設計者や施工者の心に響いていない、あるいは逆効果になっているケースさえあるのです。

製品の良さを伝えたいという熱意が空回りしてしまうのは非常にもったいないことです。

この市場特有のニーズや、情報を受け取る側の心理を理解しないままでは、貴重なリソースを無駄にしてしまいかねません。

この章では、多くのメーカーが陥りがちな広報活動の「落とし穴」を具体的に指摘し、なぜそれがうまくいかないのか、その理由を明らかにしていきます。

建材・木材の製品スペック偏重の「伝わらない」情報発信

自社製品に自信があればあるほど、「この優れた性能を伝えたい!」という想いが強くなるのは当然のことです。

その結果、カタログやウェブサイトには、熱伝導率、強度試験のデータ、認定番号といった「製品スペック(仕様)」が詳細に羅列されることになります。

もちろん、これらの技術情報は最終的な選定段階では不可欠です。

しかし、設計者や施工者がプロジェクトの初期段階で情報を探している時、彼らが知りたいのは必ずしも数値データだけではありません。

彼らが知りたいのは、「そのスペックが、このプロジェクトの課題をどう解決してくれるのか?」という「文脈」です。

例えば、「高い断熱性能(スペック)」を伝えるのではなく、「この断熱材を使うことで、寒冷地の大規模木造オフィスにおいて、年間の光熱費をこれだけ削減でき、快適な執務空間を実現した(価値・実績)」と伝える方が、はるかに設計者の心に響きます。

スペックを語るのではなく、そのスペックがもたらす「価値」や「ストーリー」を語ること。

この視点が欠けていると、情報はただの数字の羅列となり、設計者の記憶には残らない「伝わらない」情報発信になってしまうのです。

ターゲット(設計者・施工者)のニーズの見誤り

広報活動がうまくいかない第二の落とし穴は、情報の受け手であるターゲットの「ニーズ」を見誤っていることです。

木造非住宅のプロジェクトに関わるプレイヤーは多様です。

例えば、意匠(デザイン)を重視する設計者、構造の安全性を第一に考える構造設計者、コストと施工性を重視する工務店・ゼネコン、そして最終的な発注者。

彼らは同じ建材を見るにしても、注目するポイントが全く異なります。

意匠設計者は「この木材は、空間デザインの意図を実現できるか?」と考え、施工者は「この建材は、現場での施工がしやすいか?工期短縮につながるか?」と考えます。

多くのメーカーは、これらすべてのターゲットに対して、同じ内容のカタログやウェブページを見せてしまいがちです。

しかし、施工者向けの「施工マニュアル」のような情報を意匠設計者に見せても響きませんし、逆もまた然りです。

大切なのは、「誰に」情報を届けたいのかを明確にし、そのターゲットが「今、どんな情報を、どんな言葉で」求めているのかを徹底的に考えることです。

ターゲットのニーズを正しく理解し、それに合わせた「切り口」で情報を提供しなければ、せっかくの情報もスルーされてしまうのです。

建材・木材のオフライン展示会「だけ」に頼る限界

建材業界の伝統的な広報活動といえば、建築関連の大規模な「展示会」への出展です。

実物を見てもらい、直接名刺交換ができる展示会は、確かに重要な営業機会の一つです。

しかし、現代において、このオフラインの展示会「だけ」に頼る戦略には限界が来ています。

第一に、展示会は「コスト」がかかります。

出展料、ブース設営費、人件費など、多額の投資が必要ですが、その場で商談につながるケースは限定的です。

第二に、展示会は「一過性」のものです。

会期中の数日間は盛り上がっても、そこで得た名刺をその後の継続的な関係構築につなげられている企業は多くありません。

そして最も重要な点は、設計者や施工者の「情報収集行動の変化」です。

彼らは今、何か課題に直面した時、まず手元のスマートフォンやPCで「検索」します。

展示会に足を運ぶのは、ある程度情報収集が進んだ後か、あるいは特定の目的がある場合です。

つまり、日常的な情報収集の場は、オフラインから「オンライン(WEB)」へと大きくシフトしているのです。

このWEB上での情報発信をおろそかにし、展示会頼みになっている状態では、日常的に情報を探している多くの潜在顧客を取りこぼしていることになります。

デジタルで差をつける!建材・木材の認知度向上のWEB戦略

デジタルで差をつける!認知度向上のWEB戦略

設計者や施工者の情報収集の主戦場がWEBへと移行した今、建材・木材メーカーにとってデジタル戦略は「やってもよいこと」ではなく、「必須」の取り組みとなりました。

彼らが検索エンジンで課題を検索した時、そこに御社の情報が「信頼できる解決策」として表示されるかどうか。

それがビジネスチャンスを左右します。

しかし、単にウェブサイトを作って製品情報を並べるだけでは不十分です。

木造非住宅市場の専門性の高さと、ターゲットのニーズを踏まえた、戦略的なアプローチが求められます。

この章では、検索に強く、設計者・施工者から「役立つ」と評価されるオウンドメディアの構築術から、具体的なコンテンツマーケティングの手法まで、デジタルで認知度を勝ち取るための具体的な戦略を解説します。

設計者の建材・木材の情報収集に応える「オウンドメディア」構築術

「オウンドメディア」とは、自社で保有・運営するメディア、つまり自社のウェブサイトやブログのことです。

木造非住宅市場で認知度を高める上で、このオウンドメディアは最強の武器となります。

なぜなら、設計者や施工者が検索する「悩み」や「疑問」に対する「答え(ナレッジ)」を、自社の言葉で自由に、かつ詳細に発信できるからです。

成功するオウンドメディアの鍵は、「売り込み」をしないことです。

製品の宣伝ページばかりが並んでいては、訪問者はすぐに離脱してしまいます。

彼らが求めているのは、

「木造での耐火設計のポイント」

「CLTを使った場合のコスト試算」

「異種構造併用の際の注意点」

といった、実務に役立つ専門知識です。

まずは、ターゲットが検索しそうなキーワード(例えば「木造 耐火被覆 納まり」など)を洗い出します。

そして、そのキーワードに対する回答となる「解説記事」や「技術コラム」を作成・蓄積していくのです。

もちろん、記事の最後には関連する自社製品の情報をそっと添えますが、あくまでもメインは「役立つナレッジの提供」です。

これにより、御社は「建材を売る会社」から、「木造建築の専門知識を持つ、信頼できるパートナー」へと認知が変わっていくのです。

建材・木材を施工事例で語る「コンテンツマーケティング」の力

オウンドメディアで発信する情報の中で、最も強力なコンテンツの一つが「施工事例」です。

スペックや解説記事だけでは伝わらない製品の「実際の価値」を、施工事例は雄弁に物語ってくれます。

しかし、単に「〇〇施設に採用されました」という実績報告と竣工写真を掲載するだけでは不十分です。

木造非住宅市場で求められる施工事例とは、「プロジェクトの背景」と「課題解決のストーリー」が描かれたものです。

例えば、

「なぜこのプロジェクトで木造が選ばれたのか?」

「設計者はどのようなデザイン意図を持っていたのか?」

「施工段階でどのような課題(難易度の高い納まり、厳しい工期など)があったのか?」

「その課題を、御社の製品がどのように解決したのか?」

といった裏側を詳細にレポートします。

可能であれば、そのプロジェクトに関わった設計者や施工担当者のインタビューを掲載すると、情報の信頼性は飛躍的に高まります。

このような「ストーリー」のある施工事例は、単なる実績紹介を超え、未来の顧客が自身のプロジェクトをイメージするための「お手本」となります。

これこそが、信頼と共感を呼ぶコンテンツマーケティングの核心です。

木造非住宅におけるSNSとWEB広告の戦略的活用法

オウンドメディアに素晴らしい記事や施工事例を蓄積しても、それが読まれなければ意味がありません。

そこで重要になるのが、SNSやWEB広告を活用して、作成したコンテンツを「届ける」活動です。

建築業界、特に設計者の間では、InstagramやX(旧Twitter)、Pinterestなどがデザインのインスピレーション源や情報収集ツールとして活用されています。

オウンドメディアで公開した美しい施工事例の写真や、役立つコラムの要約を、これらのSNSで発信することで、これまで御社を知らなかった層にも情報を届けることができます。

この際、売り込み色は出さず、あくまで「役立つ情報」や「美しい建築写真」としてシェアすることがポイントです。

また、より確実に対象者に届けたい場合は、WEB広告も有効です。

例えば、「特定の建築系メディアを閲覧している人」や、「木造建築に関連するキーワードを検索した人」に限定して広告を配信することができます。

展示会に多額の費用を投じる代わりに、WEB広告で「木造非住宅の設計者」という非常に精度の高いターゲットに絞って、自社の「役立つコラム」や「最新事例」を届ける方が、はるかに効率的な認知度向上につながるケースも多いのです。

木造非住宅の建材・木材で「選ばれる」ためのパートナー戦略

「選ばれる」ためのパートナー戦略

木造非住宅のプロジェクトは、メーカー、設計事務所、工務店・建設会社など、多くの専門家が連携して初めて成り立つ複雑な事業です。

単に製品を「売る・買う」という関係性だけでは、プロジェクトが直面する様々な課題を乗り越えることはできません。

これからの建材・木材メーカーに求められるのは、製品サプライヤーとしてだけでなく、専門知識をもってプロジェクトを支える「パートナー」としての役割です。

デジタルでの情報発信と並行し、リアルな場での強固な関係性を築くこと。

それが、競合他社との決定的な差別化につながり、「選ばれる」ための強固な基盤となります。

この章では、設計者や施工者と、いかにして信頼関係を築いていくかの具体的な戦略を探ります。

建材・木材メーカーにおける設計事務所との効果的な関係構築とは?

設計事務所、特に木造非住宅を手掛ける設計者は、常に新しい表現や技術的な可能性を探っています。

彼らとの関係構築において重要なのは、従来の「御用聞き」型の営業ではありません。

彼らが設計の初期段階で抱える「こんな表現はできないか?」「法規的にこれはクリアできるか?」といった漠然としたアイデアや課題に対し、専門的な知見から「できます。うちの製品なら、こういう方法があります」と具体的な解決策を提案できる「技術パートナー」になることです。

そのためには、日頃から一方的に製品を売り込むのではなく、勉強会や技術セミナーを通じて「役立つ情報」を提供し続けることが有効です。

すぐに案件につながらなくても構いません。

設計者の「困ったとき」に、真っ先に「あのメーカーに相談してみよう」と思い出してもらえる存在になることがゴールです。

また、設計者が情報収集に使うWEBサイトやデータベース(建材の検索サイトなど)に、自社製品の技術情報やCADデータ、BIMオブジェクトなどを整備し、彼らが「使いやすい」状態にしておくことも、地道ですが非常に効果的な関係構築の一つと言えるでしょう。

建材・木材メーカーが工務店・建設会社との連携を深める勉強会の開き方

工務店や建設会社(ゼネコン)といった「施工者」は、設計者とは異なる視点で建材を見ています。

彼らの最大の関心事は、「安全に、早く、コストを抑えて、高品質に」施工できるか、です。

特に木造非住宅は、現場での特殊な納まりや、これまで扱ったことのない新工法・新建材が登場することも多々あります。

施工者との連携を深めるためには、彼らの「施工上の不安」を取り除くための勉強会が極めて有効です。

例えば、自社の新製品を使った「施工実演会」や、現場でのトラブルを防ぐための「施工上の注意点セミナー」などです。

この時、単に「こうしてください」と一方的に説明するのではなく、実際に現場で作業する職人さんたちの声に耳を傾け、「どうすればもっと施工しやすくなるか」を一緒に考える姿勢が重要です。

メーカーが現場の苦労を理解し、施工性の改善に真摯に取り組む姿勢を見せることで、現場からの信頼は格段に高まります。

「あのメーカーの製品は、現場のことをよく分かってくれている」という信頼感が、次のプロジェクトでの採用へとつながっていくのです。

「モクプロ」のようなプラットフォーム活用のメリット

自社だけでオウンドメディアを運営し、設計事務所や工務店との関係を一つひとつ築いていくには、多大な時間と労力がかかります。

そこで有効なのが、すでに木造非住宅に関わる人々が集まっている「プラットフォーム」を活用することです。

「モクプロ」のような専門メディアは、まさにそのために存在します。

「木造化・木質化に関するナレッジ(知識)を得たい」「信頼できるパートナーを探したい」という明確な目的意識を持った設計者、施工者、そしてメーカーが集まる場です。

このようなプラットフォームを活用するメリットは明確です。

第一に、「効率性」です。

自社単独で情報発信(例えばWEB広告)を行うよりも、すでに関心の高いターゲットが集まっている場所で情報発信する方が、はるかに効率的に認知度を高められます。

第二に、「信頼性」です。

「モクプロ」という第三者のメディアが発信する情報(タイアップ記事や専門家としてのコラム寄稿など)は、メーカーが自社サイトで発信する情報よりも客観性があり、信頼されやすいという側面があります。

自社の努力と並行して、こうしたプラットフォームを戦略的に活用することで、認知度向上のスピードを飛躍的に加速させることが可能になります。

建材・木材メーカーの認知度向上の鍵は「価値の言語化」

継続的な認知度向上の鍵は「価値の言語化」

これまで、木造非住宅市場における認知度向上のための様々な戦略(デジタル、リアル)を見てきました。

オウンドメディアの構築、施工事例の作成、勉強会の開催――これらはすべて重要な戦術です。

しかし、これらの戦術をバラバラに実行するだけでは、大きな成果にはつながりません。

最も重要なのは、すべての活動の「核」となる、自社の「価値」を明確に定義し、それを「わかりやすい言葉」で一貫して発信し続けることです。

認知度向上は一朝一夕には実現しません。

継続的な活動と、その活動を振り返り改善していく地道なプロセスが不可欠です。

この最終章では、広報戦略の根幹であり、成功への最後の鍵となる「価値の言語化」について考えます。

建材・木材メーカーは自社の「強み」を再定義する

認知度向上の第一歩であり、最も重要なプロセスが、自社の「強み」を再定義することです。

「当社の製品は高品質です」「技術力があります」といった漠然とした強みでは、木造非住宅市場のプロフェッショナルには響きません。

ここで問うべきは、「自社は、他のメーカーではなく、木造非住宅市場の『誰』の『どんな課題』を解決できるのか?」という点です。

例えば、単に「大断面集成材に強い」ではなく、「大断面集成材を使い、地域の設計事務所が挑戦する中規模木造建築の構造設計とコスト計算をサポートできる」という方が、はるかに具体的です。

「短納期で対応できる」ではなく、「施工者が直面しがちな現場での急な仕様変更にも、独自の生産管理システムで柔軟に対応し、工期遅延リスクを最小限にできる」といった具合です。

このように、自社の技術やリソースを、ターゲット(設計者・施工者)が直面する具体的な「課題」と結びつけて言語化すること。

それが「選ばれる理由」となります。

まずは社内で徹底的に議論し、この「再定義された強み」を全社で共有することから始めましょう。

建材・木材メーカーは専門知識を「わかりやすい言葉」で届ける

建材・木材メーカーは、その道のプロフェッショナルとして深い専門知識を持っています。

しかし、その知識を「専門用語」のまま発信してしまうと、ターゲットに正しく伝わりません。

特に、WEB上で情報を探している設計者や施工者は、難解な論文を読みたいわけではなく、自身の課題を解決するヒントを「素早く」求めています。

認知度向上に必要なのは、専門知識を「翻訳」する技術です。

難しい技術データや法規制の解説も、図解やグラフを多用したり、具体的な事例に例えたりすることで、格段にわかりやすくなります。

例えば、「この接合部金物は、スペックが優れており…」と説明する(これは専門家同士では正しい表現ですが)よりも、「この金物を使うことで、従来は難しかった木造での大開口部(大きな窓)設計の自由度が格段に上がります」と説明する方が、意匠設計者には響きます。

自社の専門性をひけらかすのではなく、相手の知識レベルや関心事に寄り添い、「わかりやすい言葉」で届けること。

この「翻訳技術」こそが、オウンドメディアやセミナーの質を決定づけ、読者からの信頼を獲得する鍵となるのです。

建材・木材メーカーの広報活動を成果につなげる分析と改善サイクル

オウンドメディアの記事公開、セミナーの実施、SNSでの発信――これらの広報活動は「実行して終わり」ではありません。

継続的に認知度を高めていくためには、自分たちの活動がターゲットにどう受け止められたのかを「分析」し、次の一手のために「改善」するサイクル(PDCAサイクル)を回すことが不可欠です。

WEBサイトであれば、アクセス解析ツール(Google Analyticsなど)を使って、

「どの記事がよく読まれているのか?」

「どんな検索キーワードで訪問者が来ているのか?」

「資料ダウンロードや問い合わせ(成果)に繋がっているのはどのページか?」

を詳細に分析します。

もし、「耐火」に関する記事のアクセスが多いのであれば、そのテーマをさらに深掘りした記事やセミナーを企画する、といった改善が考えられます。

逆に、せっかく作った施工事例があまり読まれていないのであれば、タイトルの付け方やSNSでの紹介方法を見直す必要があるかもしれません。

こうした地道な分析と改善の積み重ねこそが、広報活動の「勘」や「思い込み」を排除し、戦略を研ぎ澄ませていきます。

感覚的な広報から、データに基づいた戦略的な広報へ。

このサイクルを回し続ける企業だけが、競争の激しい木造非住宅市場で、継続的に「選ばれる存在」であり続けることができるのです。


まとめ

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今回は、木造非住宅市場という専門性の高いフィールドで、建材・木材メーカーが「認知度」を高め、設計者や施工者から「選ばれる存在」になるための戦略について解説しました。

市場が拡大し、多くのプレイヤーが参入する今、単に「良い製品」を持っているだけでは、その価値は伝わりません。

製品のスペックを並べるのではなく、その製品が「誰の、どんな課題を解決するのか」という「価値」を、わかりやすい言葉で伝えることが重要です。

そのためには、従来の展示会中心の広報から脱却し、WEB(オウンドメディア)を活用した戦略的な情報発信が不可欠です。

設計者や施工者が日々直面する「悩み」や「不安」に寄り添い、専門知識(ナレッジ)や具体的な解決事例(施工事例)を提供することで、御社は「建材を売る会社」から、「プロジェクト成功に不可欠な、信頼できるパートナー」へと認知を変えていくことができます。

また、設計事務所や工務店とリアルな場で連携を深め、彼らの課題解決を支援する活動も、強固な信頼関係を築く上で欠かせません。

この記事でご紹介した戦略は、一朝一夕に成果が出るものではないかもしれません。

しかし、自社の「強み」を再定義し、ターゲットのニーズに真摯に応え続ける地道な活動こそが、御社のブランディングを確立し、「指名買い」を生み出す確実な道です。

「モクプロ」は、木造化・木質化に挑戦するすべての建築実務者、そしてメーカーの皆様にとっての「プラットフォーム」として、今後も有益な「ナレッジ」を提供し続けます。

この記事が、御社の認知度向上戦略の第一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いです。

ハウス・ベース株式会社の木造化・木質化支援

非住宅用途の建築物で、木造化・木質化の更なる普及が期待されています。

諸問題を解決して、木造化・木質化を実現するには、「木が得意な実務者メンバー」による仕事が必要不可欠です。

木造非住宅ソリューションズでは、発注者の課題に対して、最適な支援をご提案します。

ハウス・ベース株式会社は、建築分野の木造化・木質化を支援するサービスである「木造非住宅ソリューションズ」を展開しています。

「木造非住宅ソリューションズ」とは、脱炭素社会実現に向けて、建築物の木造化・木質化に関する課題解決に貢献するための業務支援チームです。

◾️テーマ:「(木造化+木質化)✖️α」→木造化・木質化を追求し、更なる付加価値を創出

◾️活動の主旨:木に不慣れな人・会社を、木が得意な人・会社が支援する仕組みの構築

【主なサービス内容】

◾️広報支援:コンテンツマーケティング、WEBサイト制作、コンテンツ制作等

◾️設計支援 :設計者紹介、計画・設計サポート、設計・申請補助等

◾️実務支援 :木構造支援、施工者紹介、講師等

木造化・木質化で専門家の知見が必要な場合は、ぜひハウス・ベース株式会社までお気軽にお問合せください。

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著者

一級建築士。群馬県出身。芝浦工業大学卒業後、設計事務所・工務店・木構造材メーカー勤務を経て、2015年にハウス・ベース株式会社を起業。事業内容:住宅・建築関連の業務支援。特に非住宅用途の木造化・木質化支援(広報支援・設計支援・実務支援)に注力。木造非住宅オウンドメディア「モクプロ」を運営。

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