【工務店】今こそ工務店が非住宅木造に参入すべき5つの理由

【工務店】今こそ工務店が非住宅木造に参入すべき5つの理由

現在、多くの工務店様が、主に住宅建築をフィールドとして活躍されています。

しかし近年、新設住宅着工戸数の減少予測や、資材価格の高騰など、経営環境の厳しさを感じている方も多いのではないでしょうか。

一方で、今、大きな注目を集めているのが「非住宅分野の木造化」です。

かつて非住宅建築といえば鉄骨造(S造)や鉄筋コンクリート造(RC造)が主流でしたが、環境意識の高まりや国の政策後押しを受け、オフィス、店舗、福祉施設、公共施設などで木造を採用する流れが加速しています。

これは、地域に根ざし、「木」の扱いに長けた工務店様にとって、非常に大きなビジネスチャンスです。

本記事では、なぜ今、工務店様が積極的に非住宅木造市場に参入すべきなのか、その明確な「5つの理由」について、建築実務者の皆様に寄り添う「モクプロ」が詳しく解説します。

INDEX

なぜ今「非住宅木造」なのか?拡大する市場背景

なぜ今「非住宅木造」なのか?拡大する市場背景

非住宅木造」という言葉は聞いたことがあっても、「本当に市場が動いているのか?」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。

実は、非住宅木造市場は、工務店様が参入すべき明確な「追い風」が吹いています。

社会全体の大きな流れが、非住宅分野での木材利用を強力に後押ししているのです。

ここでは、工務店様が今すぐこの市場に注目すべき、3つの市場背景について解説します。

縮小する住宅市場と対照的な非住宅の可能性

日本の人口減少に伴い、新設住宅着工戸数は中長期的に減少傾向が続くと予測されています。

これまで住宅建築を事業の柱としてきた工務店様にとって、これは経営の根幹に関わる大きな課題です。

市場が縮小すれば、当然ながら受注競争は激化します。

一方で、非住宅分野はどうでしょうか。

オフィス、商業施設、倉庫、医療・福祉施設などの非住宅建築物は、経済活動や社会インフラとして、一定の需要が継続的に発生します。

特に、木造化が可能な低層・中層の非住宅建築物は、工務店様がこれまで培ってきた技術と親和性が高い分野です。

住宅市場という「縮小するパイ」の中で競争を続けるのではなく、これから「拡大するパイ」である非住宅木造という新しいフィールドに踏み出すことは、経営リスクを分散し、事業を安定させる上で極めて重要な戦略となります。

国が後押しする「脱炭素社会」と木材利用促進

現在、世界的な潮流として「脱炭素社会(カーボンニュートラル)」の実現が急務となっています。

建築業界も例外ではありません。

建築分野では、建設時、運用時、解体時に多くのCO2を排出します。

その中で「木材」は、鉄やコンクリートと異なり、製造時のエネルギー消費が少なく、さらに樹木が成長過程でCO2を吸収・固定している「炭素の貯蔵庫」でもあります。

木造建築物を建てることは、それ自体がCO2排出削減に直結するのです。

国もこの流れを強く後押ししており、公共建築物のみならず、民間建築物においても木材利用が強く推奨されています。

SDGsやESG投資への関心が高まる中、施主(企業)側も、環境に配慮した「木造」の社屋や店舗を求めるケースが増加しています。

「ウッドショック」を経て見直される国産材活用の流れ

2021年頃に発生した「ウッドショック」は、輸入木材の価格高騰と供給不安により、多くの工務店様を悩ませました。

この出来事は、木材の安定供給という観点から、国内の豊富な森林資源、すなわち「国産材」の価値を再認識させる大きなきっかけとなりました。

非住宅木造、特に中大規模木造の建築物では、構造材として強度が高く品質が安定した国産のJAS構造材(集成材やCLTなど)が活用されるケースが主流です。

国も、森林資源の循環利用と林業の活性化を目指し、国産材の利用を推進しています。

非住宅分野で国産材の需要が高まることは、地域の林業や製材所との連携を強化するチャンスでもあります。

地元の木材を使って地域の建物を建てるという、地産地消のストーリーは、地域工務店様のブランディングにも大きく貢献するでしょう。

住宅建築の技術がそのまま活きる!工務店の強み

住宅建築の技術がそのまま活きる!工務店の強み

「非住宅」と聞くと、S造やRC造の経験がないため「自社にはハードルが高い」と感じるかもしれません。

しかし、「非住宅木造」であれば話は別です。

むしろ、住宅建築で長年培ってきた工務店様ならではの「強み」を、そのまま活かすことができるのです。

非住宅分野は、ゼネコンだけのものではありません。

工務店様が持つ技術こそが、これからの非住宅木造で求められています。

「木」を知り尽くした施工管理ノウハウ

工務店様の最大の強みは、なんといっても「木」の扱いに慣れていることです。

木は生き物であり、一本一本に個性があります。

乾燥による収縮、反り、強度など、木の特性を深く理解していなければ、良質な木造建築は建てられません。

非住宅木造においても、基本は「木の軸組」です。

もちろん、住宅より大きなスパン(柱間の距離)を飛ばすための構造的な知識(例:集成材の活用や金物工法)は必要になりますが、それは学ぶことが可能です。

基本的な木の性質を理解し、現場で木材を適切に管理・施工できるノウハウは、S造やRC造を主としてきた事業者にはない、工務店様だけの大きな財産です。

このアドバンテージを活かさない手はありません。

高気密・高断熱。住宅で培った「快適性」の追求

近年の住宅建築において、「高気密・高断熱」は当たり前の性能となりました。

快適な温熱環境を実現し、エネルギー消費を抑える(省エネ)技術は、工務店様の最も得意とするところではないでしょうか。

この「快適性」や「省エネ」への要求は、非住宅分野でも急速に高まっています。

特に、オフィスや福祉施設、店舗など、人が多くの時間を過ごす空間では、働きやすさや居心地の良さが、建物の価値そのものを左右します。

木材が持つ調湿性や断熱性に加え、工務店様が住宅で培った高度な断熱施工技術や換気計画のノウハウは、非住宅木造において非常に強力な武器となります。

S造やRC造では実現が難しい、温かみと快適性を両立した空間を提供できるのは、工務店様ならではの強みです。

地域密着だからできる柔軟な対応力

工務店様の多くは、地域に深く根ざして活動されています。

施主様との距離が近く、細やかな要望にも柔軟に対応できる「小回りの良さ」も、大手ゼネコンにはない魅力です。

非住宅木造の案件は、必ずしも超大規模なものばかりではありません。

地域のクリニック、小規模な店舗、事務所、倉庫など、多様なニーズが存在します。

「この土地の気候を知っている」

「地元のネットワークがある」

「何かあればすぐに駆けつけてくれる」

といった地域工務店ならではの信頼感は、施主様にとって大きな安心材料です。

住宅で築き上げてきた信頼をベースに、非住宅分野でもその柔軟な対応力を発揮することで、新たな顧客層を掴むことが可能になります。

経営の安定化。新規事業としての「非住宅木造」

経営の安定化。新規事業としての「非住宅木造」

非住宅木造への参入は、単に新しい市場に挑戦するというだけでなく、工務店様の「経営体質」そのものを強化する可能性を秘めています。

住宅事業一本足打法のリスクを回避し、より安定的で収益性の高い事業構造を構築するための、戦略的な一手となり得るのです。

企業の「持続可能性」を高める視点から、そのメリットを見ていきましょう。

住宅事業の閑散期を補うポートフォリオ

住宅事業には、どうしても需要の波があります。

例えば、決算期前や補助金の締切前は多忙でも、それ以外の時期は受注が落ち込むといった「閑散期」に悩まされる工務店様も少なくありません。

非住宅建築は、住宅とは異なるスケジュール感で動くことが多く、特に公共事業や法人の設備投資案件は、住宅の需要サイクルとは連動しない傾向があります。

非住宅木造という新たな柱を持つことで、住宅事業の閑散期を非住宅案件で補うといった、事業ポートフォリオ(事業の組み合わせ)の最適化が可能になります。

特定の市場動向に左右されない、安定した受注体制と収益基盤を確立することは、工務店経営の安定化に直結します。

案件単価の向上と利益率の改善

非住宅建築は、一般的に住宅建築よりもプロジェクトの規模が大きく、案件単価が高くなる傾向があります。

もちろん、求められる仕様や技術レベルも高くなりますが、それに見合った利益を確保しやすい市場とも言えます。

住宅市場での過度な価格競争から一歩抜け出し、非住宅木造という付加価値の高い分野で実績を積むことは、会社全体の利益率の改善に貢献します。

また、一度、非住宅分野での施工実績(例えば、〇〇クリニックや△△店舗など)を作ることができれば、それが信頼の証となり、次の非住宅案件の受注にもつながりやすくなります。

専門性が高い分野であるため、適正な価格で受注しやすい環境が整っている点も大きな魅力です。

地域のランドマークを手がける「やりがい」と「広報効果」

工務店様が手がける非住宅木造は、その地域の「ランドマーク」となる可能性を秘めています。

例えば、デザイン性の高い木造のカフェ、地域住民が集う公民館、子供たちが通う保育園などです。

これらは、単なる「作品」ではなく、工務店様の技術力やデザイン力を示す、何より雄弁な「広報(広告塔)」となります。

住宅はプライベートな空間であるため一般の人が見る機会は限られますが、非住宅建築は多くの人の目に触れ、利用されます。

「あの素敵な建物を建てたのは、地元の〇〇工務店だ」という認知は、企業のブランド価値を飛躍的に高めます。

これは、非住宅案件の受注促進だけでなく、優秀な人材の採用(リクルート)活動においても、非常に強力なPR効果を発揮するでしょう。

参入障壁は高くない!「中大規模木造」の技術的課題を越える

参入障壁は高くない!「中大規模木造」の技術的課題を越える

とはいえ、非住宅木造、特に「中大規模木造」となると、住宅とは異なる専門知識が必要になることも事実です。

例えば、「構造設計」や「耐火・防火規定」などは、多くの方が不安に感じるポイントでしょう。

しかし、結論から言えば、これらのハードルは決して越えられないものではありません。

法改正という追い風と、専門家と「協業」する意識があれば、道は開けます。

2025年「建築基準法改正」が追い風に

これまで、非住宅木造を難しくしていた要因の一つに、建築基準法の厳しい規制がありました。

特に、耐火性能に関する要求がハードルとなり、都市部での木造化が進みにくい側面がありました。

しかし、2025年4月(予定)に施行される建築基準法の改正は、この状況を大きく変える可能性があります。

この改正では、耐火規制や構造規制の合理化が進められます。

例えば、これまで耐火建築物とする必要があった一定規模の建物でも、火災安全性を確保する別の手法(燃えしろ設計の活用など)が認められやすくなり、木造(木を現しにするなど)で設計できる範囲が広がります。

このように、法律そのものが「木造化を後押しする」方向へ舵を切っている今こそ、工務店様が参入する絶好のタイミングと言えます。

構造設計や防火・耐火。専門家との協業が鍵

工務店様が非住宅木造参入する際、すべてを自社で完結させる必要はありません。

特に、中大規模木造で必須となる複雑な「構造計算(許容応力度計算や保有水平耐力計算など)」や、厳格な「防火・耐火設計」については、専門家の力を借りるのが賢明です。

具体的には、非住宅木造を得意とする設計事務所や、構造設計専門の事務所、あるいは木造技術に特化したコンサルタントとの「協業」です。

工務店様は、得意とする「施工管理」「木材の調達」「現場での品質確保」に集中し、専門的な設計申請部分はパートナーに任せる。

こうした役割分担こそが、非住宅木造プロジェクトを成功に導く鍵です。

プレカットやCLT。進化する木造技術の活用

近年の木造技術の進化は目覚ましいものがあります。

工務店様が住宅で慣れ親しんでいる「在来軸組工法」だけでなく、非住宅木造を実現するための様々な工法や建材が登場しています。

例えば、工場で柱や梁を精密に加工する「プレカット技術」は、非住宅分野でも一般化しており、現場での施工精度とスピードを大きく向上させています。

また、大きなスパンや高い強度が必要な場合には、「大断面集成材」や、木の板を直交させて貼り合わせた「CLT(直交集成板)」といった先端技術も活用できます。

これらの新しい技術や建材に関する知識は、一見難しそうですが、学ぶことはできます。

技術は日々進化しており、工務店様が参入するハードルは確実に下がっています。

「モクプロ」と歩む。非住宅木造への第一歩

「モクプロ」と歩む。非住宅木造への第一歩

ここまで非住宅木造市場の魅力や、工務店様が参入すべき理由を解説してきました。

しかし、

「何から始めれば良いかわからない」

「具体的な実務で困った時に誰に相談すればいいのか」

という不安もあるかと思います。

「モクプロ」は、まさにそうした建築実務者の皆様が抱える不安に寄り添い、挑戦を成功へと導く「プラットフォーム」として存在しています。

まずは情報収集。「ナレッジ」で学ぶ非住宅の基礎

非住宅木造への第一歩は、正しい「情報収集」から始まります。

住宅と非住宅では、法律の適用、求められる性能、設計の進め方など、異なる点が少なくありません。

「モクプロ」では、この記事のような「ナレッジ」コンテンツを通じて、非住宅木造に関する専門知識を基礎から応用まで体系的に提供していきます。

例えば、

「非住宅で求められる防火規定とは?」

中大規模木造の構造計画のポイント」

「最新の法改正の解説」

など、実務に直結する情報をわかりやすく発信します。

まずはこうした情報をインプットし、非住宅木造の全体像を掴むことが、不安を解消し、自信を持って一歩を踏み出すための基盤となります。

専門家とつながる。「コミュニティ」の活用

知識(ナレッジ)を得た次に重要になるのが、「人とのつながり」です。

非住宅木造のプロジェクトは、前述の通り、設計事務所や構造専門家、あるいは木材を供給するメーカーなど、多くの関係者との協業(コラボレーション)によって成り立ちます。

「モクプロ」が目指す価値の一つに「コミュニティ」の形成があります。

私たちは、勉強会や実際の建築物を見る見学会、実務者同士がノウハウを交換できるイベントなどを通じて、工務店様と、非住宅木造に必要な専門家やパートナー企業とが出会える場を提供していきます。

ネットワークの力で課題を解決し、新たなビジネスチャンスを創出する。それが「モクプロ」の「コミュニティ」です。

地域の「プロフェッショナル・パートナー」を目指して

「モクプロ」を運営する私たちハウス・ベース株式会社は、工務店様、設計事務所様、建材メーカー様など、木造化木質化に関わる皆様の「プロフェッショナルのパートナー」でありたいと考えています。

非住宅木造への参入は、御社にとって大きな挑戦かもしれません。

しかし、それは同時に、会社の未来を拓く大きな可能性でもあります。

私たちは、単なる情報発信に留まらず、広報支援コンテンツマーケティング)や、プロジェクトの紹介などを通じて、皆様の挑戦が成功するよう具体的にサポートします。

非住宅木造というフィールドで、工務店様が主役として活躍し、地域社会に貢献していく。その実現のために、「モクプロ」を羅針盤としてご活用いただければ幸いです。

まとめ

まとめ 非住宅木造 工務店

今回は、「非住宅木造に工務店が積極的に参入すべき5つの理由」と題して解説しました。

ポイントを整理すると、

  1. 住宅市場の縮小に対し、非住宅木造市場は国策として拡大している
  2. 住宅で培った「木」の扱いや「快適性」の技術が最大の武器になる
  3. 案件単価の向上や事業ポートフォリオの最適化など、経営安定化に直結する
  4. 2025年の法改正や技術進化が参入のハードルを下げている
  5. 「モクプロ」のようなプラットフォームが情報や協業の場を提供する ということです。

非住宅木造への挑戦は、これまでの延長線上にはない、新たな知識やネットワークが必要となるかもしれません。

しかし、その先には、住宅市場だけでは得られなかった新しいやりがいと、安定した経営基盤が待っています。

「木」を熟知した工務店様こそが、これからの非住宅木造市場の主役です。

私たち「モクプロ」は、その挑戦を「ナレッジ」「プロジェクト」「コミュニティ」の3つの価値で全力で支援する「プロフェッショナルのパートナー」です。

ぜひ本記事をきっかけに、非住宅木造への第一歩を踏み出していただければと思います。

ハウス・ベース株式会社の木造化・木質化支援

非住宅用途の建築物で、木造化・木質化の更なる普及が期待されています。

諸問題を解決して、木造化・木質化を実現するには、「木が得意な実務者メンバー」による仕事が必要不可欠です。

木造非住宅ソリューションズでは、発注者の課題に対して、最適な支援をご提案します。

ハウス・ベース株式会社は、建築分野の木造化・木質化を支援するサービスである「木造非住宅ソリューションズ」を展開しています。

「木造非住宅ソリューションズ」とは、脱炭素社会実現に向けて、建築物の木造化・木質化に関する課題解決に貢献するための業務支援チームです。

◾️テーマ:「(木造化+木質化)✖️α」→木造化・木質化を追求し、更なる付加価値を創出

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木造化・木質化で専門家の知見が必要な場合は、ぜひハウス・ベース株式会社までお気軽にお問合せください。

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著者

一級建築士。群馬県出身。芝浦工業大学卒業後、設計事務所・工務店・木構造材メーカー勤務を経て、2015年にハウス・ベース株式会社を起業。事業内容:住宅・建築関連の業務支援。特に非住宅用途の木造化・木質化支援(広報支援・設計支援・実務支援)に注力。木造非住宅オウンドメディア「モクプロ」を運営。

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